ふるはしかずおの絵本ブログ3

『八郎』-なぜ大きくなりたいのか、八郎

ぬ

むかし、秋田に、 

八郎という名の山男が、住んでいました。

八郎は、かしの木ほどもある 大男。

あーあー、おら、もっと おっきくなりてえなあー

でも、なぜ

自分が 大きくなりたいと 思うのかが わかりませんでした。

     ・・・       

ある日、

小さな子どもが 泣いています。

聞けば、

毎年、海が荒れて、 

村の田んぼが、しお水をかぶって、だめになってしまう

と言うのです。

        ・・・

      八郎 も よ、  

      おっきな おっきな    山男だったども、  

      つい、  かなしく    なってせ、 

      石うす    みてえだ     なみだこ   一つぶ、 

      ぽろーり と     こぼして な・・・

        ・・・

八郎は、

村の人たちを 助けようと、

山を持ちあげ、 海の中に放りこみ、海の水を せき止めます。

        ・・・

こんどは、

おこった海が、 むくむく、 もくもく押しよせてきます。

八郎は、 村を守るために

両手を広げ、 波をむねでおし返し、海のなかへ、ぐっくと 入っていくのです。

        ・・・

       わかったあ !  

       おらが、  なしていままで、  

       おっきくおっきく  なりたかったか !    

       おらは、  こうして おっきく    おっきくなって、  

       こうして、   みんなのため

       になりた かったなだ、  んでね が、  わらしこ !

        ・・・・・

村の人たちを 助けたい、

泣いてる 子どもの力になりたい、

八郎は、そのために 海に 沈んでいきました。

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     ・・・        

大きくなること。

それは、みんなのために なることである、と いうことに 目覚めた のでした。八郎 の 行動は、子どもの涙を ぬぐってやりたい、という思いからでした。彼のやさしさからでた行為です。ひとりの 子どものためにした 行動が、すべての村人を 生かすことになりました。

       ・・・

 海に 沈んでいく 八郎。

 八郎は、死んだのでしょうか。

 それとも、永遠に 生きているのでしょうか。

       ・・・

滝平二郎さんの版画は 文章とひびきあっています。また、文章も力強い日本語です。秋田弁の文章と 版画は、がっぷりと四つに組んでいます。堅固な建物をみるようです。読みかたりのむずかしい絵本ですが、挑戦してみてください。

お二人の絵本には、

『 三コ 』 ( 福音館書店 )、

『 モチモチの木 』( 岩崎書店 )

 『 花さき山 』( 岩崎書店 )

『 半日村 』( 岩崎書店 )などがあります。

      ・・・

※ 『八郎』  斎藤隆介文、  滝平二郎画、  福音館書店  1967年

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