ふるはしかずおの絵本ブログ3

『 もりのくま と テディベア 』- くまの中に自分を見る

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谷川俊太郎さんと和田誠さんの絵本です。森の中で生活するくまとテディベアを対比して表現しています。生きるとはなにか、幸せとはなにかを問いかけます。
     ・・・
もりのくまは ゆったりあるく
このまがくれの おひさまあびて
すきなはちみつ さがしてあるく
 
     
 ショーウィンドウの テディベアは 
 あしはあるけど すわってるだけ 
 どこへもいかない なにもたべない

     ・・・
森のくまは恋をする。
子どもがうまれる。
ええ
年をとる森のくま。
足もよわり、目もかすむ。
そして、
森のくまは死んでいく。
    ・・・
 テディベアは何もしない、まっているだけ。
 だれかが だきしめてくれるのを。
 年をとらない、
 ほころびるだけ。
 でも、値段はたかくなる。
  (プレミアがつくことで)
 いつまでも、ねむれない。
 ガラスのめだまに よのなかをうつして
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森のくまとぬいぐるみのテディベアの対比は書体にもあります。森のくまはゴシック体で、テディベアの文は明朝体です。また、上のふたつの絵にあるように絵の雰囲気も違います。
森のくまとテディベアの違いは、いったいどこから生まれてくるのでしょうか。
森のくまは、自然な環境のなかで、自然にしたがう生き方をしています。自分で生き方を決定します。一方、テディベアを取りまく環境やかれの生き方は、主として人間関係によっています。かれの価値や意味は、人との関係性のなかで決まっています。たとえて言えば、森のくまは自然数であり、テディベアは分数です。分母によってその大きさが決まる分子と言えるかもしれません。
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読み終わって、森のくまとテディベアの中に自分を見ます。自分の中に、もりのくまとテディベアのようなふたつの存在を見つけます。そして、社会的な関係や肩書きから離れたとき、わたしに残るのはなんだろうかと考えます。ふたりのくまは何もいいませんが、こう言ってるようにも思います。
「ボクはくま( テディベア )。で、きみはいったい何もの?」
      ・・・
※『 もりのくま と テディベア 』 谷川俊太郎詩 和田誠絵 金の星社 2010年  (2019/1/27)

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