ふるはしかずおの絵本ブログ3

『 きりの なかの サーカス 』- 絵本表現の可能性を ひろげた絵本

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『きりのなかのサーカス』は、絵をたのしむ絵本。
ブルーノ・ムナーリ( 1907~1998 )の傑作絵本です。
3部構成になっています。
     ・・・
<はじめ>
トレーシングペーパーが、見通しのきかない霧の世界を表現しています。
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霧のなかでは、
鳥は、すぐにもどってきます。
バスは、霧をかきまぜ、
ねこは、よちよち歩き、
スポーツカーは、いらいら。
都会のなかの 霧の世界です。
その中から、
赤や黄色のサーカスの あかりが、見えてきます。
      ・・・
<つづき>
グランドサーカスは 稽古中。
サーカスの世界は、カラフルな紙です。穴あけの仕掛けもあります。
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ページをめくると・・・
らっぱの音、
重量挙げは疲れるってと言う くろねこ、
ジャグラー、
かくれんぼしている さかなたち、
おそろしいアリに気がつかない ライオン、
200歳になる 弓矢の 男、
香港からやってきた ハエ、
小鳥をびっくりさせる 汽車・・・
脈絡のないものが 並んでいます。
むしろ、
それが、喧噪・混沌とした サーカスの世界を表現しています。
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<おわり>
ふたたび
霧の世界です。
トレーシングペーパーで、霧を表現しています。
静かな自然の世界をとおり、少年のフィドが家へもどります。
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ページをめくると、霧の中にはいり、カラフルなサーカスの世界を体験し、また霧の世界へもどっていきます。言葉は最小限に切り詰められています。霧は、ファンタジーの入り口であり、出口です。霧に囲まれてたサーカスは、それ自体が非日常の世界ですが、さらに不確かで幻のような世界になってきます。
谷川俊太郎さんの訳で読みなおしてみました。やはり絵本表現の可能性をひろげた絵本です。
      ・・・
※『きりのなかのサーカス』 ブルーノ・ムナーリ作・絵 谷川 俊太郎訳、 フレーベル館  2009年 初版は1968年 (2016/3/31)

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