ふるはしかずおの絵本ブログ3

『子リスのアール』-赤いスカーフ

『くまのコールテンくん』でおなじみのドン・フリーマンの1955年の作品です。 子リスのアールの冒険物語です。

 

      ・・・

お母さんは、

息子のアールに言いました。

「ねえ、アール。そろそろおまえも、外にでて、じぶんの手でドングリを見つけることを、おぼえるときだよ

     ・・・

アールは、

人間のともだちの、ジルを訪ねます。

ジルは、アールにドングリとクルミ割をあげます。

喜んで帰ってきたアールに

お母さんは、言います。

「リスのくせに、クルミわりきがいるなんて、きたことがある?」

     ・・・

つぎに

ジルは、赤いスカーフをアールにあげました。

うれしくなって、帰ってきたアールに

お母さんは、言います。

「リスのくせに、くびをあたためるものがいるなんて、きたことがある?」

ここから、後半です。

お話はずんずん急ぎます

  ( 宮沢賢治『 虔十公園林 』 の中の語り手の言葉)

 

夜、
アールは、ドングリ見つけようとして、  

木のうろ(空洞)をのぞくと、

大耳のミミズクがいます。

「どこにいけばドングリが見つかるか、おしえてくれませんか」

「おおきなナラの木に、わんさかあったはずだ。」

でも、赤い色見ると怒りだす、雄ウシのコンラッドに注意しなさい。
ミミズクは、アールに忠告します。

      ・・・

ナラの木には、やはり、コンラッドがいました。

コンラッドは、アールの赤いスカーフを見ると、

興奮して、

大暴れ

ナラの木に 体当たり。

すると…

その衝撃で、

ドングリが、なん百もふってきました。

赤いスカーフのおかげで、ドングリを手に入れたことをお母さんに話します。そして、アールは、ジルのところへ行き、人形に赤いスカーフをまいてあげます。「もうこれ、ぼくには、いらなくなったんだ」と言って。アールは、ジルにもドングリをひとつ置いていきました。

 

      ・・・

アールの成長物語です。

赤いスカーフが印象的に使われていました。

ところで、アールのお母さんの言葉も印象的です。「じぶんの手でドングリを見つけることを、おぼえるときだよ」。ジルの好意をよろこんでいるアールに向かって、「リスのくせに、クルミわりきがいるなんて、きたことがある?」「せかい一だめなリスになりたいのかい、おまえは」。お母さんはアールの自立求めています。子どもたちはアールに同化して絵本を体験するでしょう。主人公はアールと言えますが、 大人の読者はお母さんの言葉も心に残るのではないかと思います 。

 

主人公とは誰でしょうか。

主人公を決める上で、「私にとって」という条件が大切だと思います。

      ・・・

※『子リスのアール』ドン・リーマン作・絵、山下明生訳、BL出版 2006年 (2020/12/12)

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