ふるはしかずおの絵本ブログ3

『ホームランを打ったことのない君に』- 「始める前から あきらめるのかい」

121
題名が、いいですね。
主人公は、出口 塁。略して出塁です。「ルイ」と呼ばれています。
でも、すこしも打てない きみ。
今日も、2三振。
チャンスにセカンドゴロの ダブルプレー。
     ・・・
コンビニで 仙ちゃんに出会う きみ。
「見てたぜ、 今朝の試合」
「大振りの振り遅れ。飛びっこないよ、あんなんじゃ」
とアドバイスされます。
99
出島商業の野球部のレギュラーだった 仙ちゃん。
でも、仙ちゃんも、ホームランを打ったことがありません。
「打ちてえなあ、ホームラン!」
     ・・・
仙ちゃんの憧れは、長崎ホークスの象島選手。先週、ビッグマイン・スタジアムで、場外ホームランを打ったところを見た 仙ちゃん。象島選手みたいなホームランバッターは、「まさに 神に選ばれた人だな」。
でも、そんな象島選手も、自分の思うような身体をつくるのに、10年かかったことを きみに教えています。食事、ウェイトトレーニング、ハードな練習を積み重ねて。
     ・・・
「ぼくは 神に選ばれてない気がする」ときみ。
始める前から あきらめるのかい」と仙ちゃん。
「やってみないとわからんだろう。オレだって まだあきらめていないぞ」
88
家に帰って、おかあさんから、仙吉君は、去年交通事故で重傷を負ったことを知らされた きみ。
歩けなくなるかもしれないと言われた 仙ちゃん。
いま、病院でリハビリ中です。
そんななか、試合を見にきてくれたのです。
     
 ありがとう。
 ぼく、いつかホームランを打つよ。
 でも、その前にヒットだね。

     
怪我をしても野球への情熱を失わない仙ちゃん。病院でリハビリをしていることをを知ったとき、仙ちゃんの言葉が、きみの心に響きます。仙ちゃんの言葉と生き方から、励ましをもらって一歩前へと踏みだす きみ。
きみ(ルイ)と同じようにホームランを打ったことのない、全国の野球少年の「君」に向けてかかれた絵本です。
ホームランとヒットは、人生におけるなにかの喩え。とすれば、すべての人に向けたメッセージがあります。
880
文章にはありませんが、上の絵から聞こえてきます。
プレイボール!
      ・・・
※『ホームランを打ったことのない君に』 長谷川 集平作、 理論社 2006年
【 追 記 】
ルイをきみと呼んで絵本の紹介をしてみました。本文の呼称は、ルイや仙ちゃん。三人称視点の文章です。(2016/9/20) 

SHARE