ふるはしかずおの絵本ブログ3

『 きんいろのしか 』- 再版を望みたい絵本
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バングラデシュの昔話です。

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昔、

グリスタンと呼ばれた南の国に、

世界で一番 金が好きな王さまが いました。
ある日、狩りにでかけた王さまは、ふしぎな光をみつけました。

それは、金いろに輝く鹿。

鹿が踊ると、その足あとは金の砂に変わり、あたり一面に飛びちります。欲に目がくらんだ王さまは、鹿を捕まえようとしました。

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一方、

草原に牛追いをしていた ホセン がいます。
そこへ、きんいろの鹿が現れ、
「私は追われています」と助けを求めました。
「ああ、いいとも!」
しかし、

ホセンは、王さまに囚われてしまいました。
「3日のうちに あの鹿を捕まえてこい」と王さまに脅されます。
ホセンは、きんいろの鹿をさがしに、旅立ちます。

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途中、

虎の子を助けました。
虎の親は、お礼に、ホセンを背中にのせ旅立ちます。
つぎに象と出会い、
象の鼻に刺さった矢を抜いてやります。
象はお礼に、蓮の花咲く池まで、ホセンをつれて行きました。
「いけの みぎがわを つたっていくと、向こう岸に ちいさなほらあながあり、きんいろのしかは そこにすんでいます。」
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そこで、ホセンは きんいろの鹿に出会いました。
鹿は、ホセンのはなしを聞き終わると、

彼を背中にのせ、飛ぶように はしりだしました。

ふたりは、あっという間に王さまの御殿に。
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王さまは「金をだせ、金をだせ」と急き立てます。

鹿は、踊りだします。
金の砂が、とびちります
鹿は、踊りつづけました。
王さまたちのひざは、金でうまり、
金は、胸までとどきます。
鹿は、まだ踊りつづけます。
とうとう、積もりつもった金の下に みんな埋もれてしまいました。
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鹿は踊りをやめ、
ホセンを乗せて、牛たちの待つ草原へ帰ります。
そして、きんいろの鹿は  西の空にきえていきました。
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石井桃子さん(1907年-2008年)の文章です。日本画家の秋野不矩さん(1908年-2001年)が 絵を描いています。長いおはなしですが飽きません。話の骨格がしっかりとしていて、読者をぐいぐい引っ張っていきます。前半はホセンに、後半はきんいろの鹿に同化しながらおはなしを体験します。

また、秋野不矩さんの絵に異国情緒を感じます。躍動感があり、一枚一枚の絵を絵画作品として見る楽しみを誘います。このような素敵な絵本ですが、現在、絶版のようです。再版を望みたい絵本です。
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※『 きんいろの しか 』 ジャラール・アーメド案 石井桃子再話 秋野不矩 絵 福音館書店 1968年  (2019/11/19)

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