昆虫の擬態の 写真絵本です。
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コノハムシ の翅脈は、はっぱに葉脈にそっくり。
今森さんによると、オスにはうすい羽があって飛べます。
「 しかし、 メスには、 後羽がないのでとべません。 コノハムシのメスは木の葉になるために羽までなくしてしまったのです 」。
おもしろい虫ですね。進化の不思議です。
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擬態とは、
「 ある種の生物が 自分以外の 何物かに 外見( 色、 模様、 形 )や におい、 動きなどを似せることで、 生存上の利益を得る現象 」のこと。
枯れ葉そっくりの カレハバッタ、 カレハガ
小枝とみわけがつかない ナナフシ、 シャクトリムシ
幹の模様にそっくりな キノハダキリギリス
これらの昆虫は、目立たないことで、敵に襲われることを防いでいます。こうした カモフラージュの機能をもつ擬態のことを、隠微的擬態と いいます。
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擬態の もうひとつの働きは、わざと目立つことで、身を守ることです。標識的擬態と いいます。
今森さんはこんな例を紹介しています。
「 スカシバガのなかまは、みかけだけでなく、とんでいるときも ブゥオーンという、 オオスズメバチそっくりの 羽音をたてて とびまわりますから、ちょっとみやぶれません 」。
外見(色、模様、形)だけでなく、羽音や 動きまで 似せると いうのです。驚きです。
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擬態というと身を守るイメージがありますが、獲物を とるための擬態もあります。これを 攻撃擬態 といいます。
今森さんの絵本には、
ハチをつかまえる ハナカマキリの例が のっています。花そっくりに なって虫を おびき寄せるのです。
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それにしても、 昆虫たちは、どうして植物に似せたり、他の虫に 似たりするように なったのでしょうか。他のものに似る形質は、どのような内的なメカニズムによって現れるのでしょうか。この問題は難問で まだよくわかって いないようです。
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この絵本に載せられた昆虫は、
ペルー、
コロンビア、
ブラジル、
マレーシア、
フィリピン、
そして
日本で撮られたものです。
ひとつひとつの写真が、手間ひまかけて 撮影されたものにちがいありません。これらの昆虫は、すばらしく個性的な自然のアーティストです。そして、わたしたちの自然を見る目を豊かにしてくれるのです。
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※『 森の小さなアーティスト 』 今森光彦文・写真、 福音館書店 1996年
擬態をするのは昆虫だけではありません。 鳥、 獣、 サカナのなかにもいます。 中村庸夫さんに 『 水中の擬態 』( 平凡社 )というすばらしい写真集があります。また、海野和男さんの『 昆虫の擬態 』( 平凡社 )も すばらしい写真集です。 擬態の写真を撮ることは、海野さんの学生時代からのライフワークだそうです。