いずみがもりの　くろもじ　三丁目。
からすの　パンやさんに、
よんわの　あかちゃんが　うまれました。
　オモチちゃん
　レモンちゃん
　リンゴちゃん
　チョコちゃん。
　　　　　　・・・
おとうさんは　パンづくりと子育てに　いっしょうけんめい。
おかあさんも　仕事と子育てに　いっしようけんめい。
でも、
おきゃくさんが　へり、
だんだん　びんぼうに　なっていきました。
　　　　　　・・・
売れない　こげたパンは、チョコちゃんたちの　おやつになりました。
お友達が　言います。
「かわった　パンが　おやつだね。」
「おとうさんしか　やけない　めずらしい　おやつパンなんだぞ。」
「おいしいの」
「おいしいわよ」
みんな　パンが　食べたくなりました。
　　　　　　・・・
からすの　パンやさんは　家族みんなで　パンづくり。
えっさか　ほっさか　こなを練り、
ころころ　ぽてぽて　丸めて、
わっさか　わっせと　かまどに　いれました。
パンは　大評判です。
次に　つくった　パンは？

いちごパン、ぞうパン、かにパン、きのこパン　うさぎパン、パンダパン、バイオリンパン、だいこんパン、たけのこパン、はさみパン、だるまパン、テレビパン、じどうしゃパン、わにパン、しまうまパン、かみなりパン、くじらパン・・・
なんと８０種類以上です。
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からすの　こどもたちも、
チリチリ ばあさんも、
マゴマゴ じいさんも、
ゴサク だんなも、
しょうぼうじどうしゃ、きゅうきゅうしゃ、ぶそうけいかんの　いちれんたいも、やってきます。
　♫　かじだ　かじだ
　　　おおかじだ！
　　　まっかっかの
　　　おおかじだ！
　　　けがにん　たくさん
　　　でたそうだ！　（ 救急車、警察官の歌もあります ）
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ユウヤケ新聞の 特派員も、
カアカア・テレビの カメラマンも　飛んできます。
パンやさんの　まわりは、
うえを　したへの　大騒ぎ。
「みっつまで　おうりいたします。」
　みっつの方は、茶色い　かざぐるま、
　ふたつの方は、あかい　かざぐるま、
　ひとつの方は、しろい　かざぐるまのところに
「おならびくださーい。」
みんな　そのとおりに　きちんと　ならびます。
おきゃくさんは　にこにこ、
おみせは　りっぱに　なりました。

子どもに受けるところが満載です。スピーディなおはなしの展開。リズム感を感じる文章とたのしいオノマトペ。人物の名前がおもしろい。たくさんのパンが出てくるところがたのしい（食べてみたい）。家族みんなでパンやを立て直すおはなしも素敵です。消防自動車、救急車、警察官のうたがいい。素朴だけど味わいのある絵もいいなあ。そして、からすの姿かたちがみんなちがう。発見がある！　読者が参加できる！　
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かこさんは言っています。「個々の生きた人物描写と全体への総合化の大事なことを、わたしはモイセーエフから学び、さて、からすの一羽一羽に試みてみたのがこの作品です。どうかそんなわけですので、もう一度からすたちの表情をみて笑ってください。」（あとがき）
この絵本にインスピレーションを与えたのが、イーゴリ・モイセーエフのロシア民族舞踊だったことにすこし驚きました。
登場するのは、みんな　おなじからす。でも、みんな　ちがうからす です。
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※『からすのパンやさん』加古里子絵と文　偕成社 　1973年　（2018/3/20）