ふるはしかずおの絵本ブログ3

『 きつねの おきゃくさま 』-ペーソスのある おはなし

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笑いのなかに、涙がにじんでくるような絵本です。
     ・・・
はらぺこ きつねが、
やせた ひよこに 出会います。
「やあ ひよこ」
「やあ きつねのおにいちゃん」
どこかに いい住処がないかと 聞く ひよこに
きつねは にやりと 笑います。
きつねは ひよこを 太らせてから 食べようと考えます
 (きつねの魂胆を知る読者、知らないひよこ)
     ・・・
「きつね おにいちゃんって やさしいねえ」
きつねは 生まれて初めて 
「やさしい」といわれ、
すこし ぼうっと なります
そして、切り株につまづき、転びそうになります、
     ・・・
あるひ、散歩に出たいという ひよこ。
 (きつねは、後をつけます)
春の歌を うたいながら、
ひよこが、であったのは やせたあひる
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心配する あひるに、
ひよこは、
「きつね おにいちゃんは、とっても しんせつなの」。
かげで 聞いていた きつねは、うっとり
「しんせつな きつね」という言葉を 5回もつぶやきます。
     ・・・
つぎは やせたうさぎ
ひよこと あひるが きつねを 「かみさまみたい」というと、
きつねは うっとりして、
もう、気絶しそうになります
ひよこ、あひる、うさぎは きつねの うちで まるまるとふとって きます。
     ・・・
ある日
くろくも山の おおかみが
うまそうな においを かぎつけます。
「ふん ふん、ひよこに あひるに うさぎだな・・・」
     ・・・
そこへ、きつねは 飛びだし、おおかみと 戦います。
ゆうきが りんりんと わきました。
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しかし、
そのばん。
 きつねは はずかしそうに わらって しんだ
     
ひよこ、あひる、うさぎの3人は、
にじの 森に ちいさなお墓を つくり、
きつねのために 涙をながしました。
     ・・・
ひよこ、あひる、うさぎは きつねをやさしいと褒めます。でも、きつねの魂胆は、3人をまるまると太らせて、食べようとするものでした。しかし、期待され信頼されているうちに、きつねはそれに応えようとします。信頼する3人に報いたいというきつねの心は、わたしたちのうちにもある真実です。最後は、勇気凛りん、おおかみと戦うことさえするきつねです。ひよこ、あひる、うさぎの3人は、最後まできつねの心を知りませんでした。でも、読者は知っています。
「はずかしそうに わらって しんだ」きつね。きつねのために涙を流し、お墓を建てた3人。深い味わいがあり、哀愁ペーソス)のある終わり方です。
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※『 きつねの おきゃくさま 』 あまん きみこ作、二俣 英五郎絵、サンリード 1984年  (2017/5/28)

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