ふるはしかずおの絵本ブログ3

『サイモンは、ねこである。』-「ぼくたち、にてますね」

類比と対比という比較の認識方法があります。 この絵本の骨格になっています。

       ・・・

「ぼく、サイモンです。ぼくたち、にてますね」
ねこのサイモンは、ライオン、チータ、ピューマ、クロヒョウ、トラに言いました。でも、みんな大笑い。


ねこのサイモンになんかには少しも似ていない、とみんな言いました。

ライオンは、言います。

「わたしが ほえれば 世界が ふるえる」

チータは、

「せかいで いちばん 速く はしれるんだぜ」

ピューマは、

「わたしは 山に すんでいるのよ」

クロヒョウは、

「おれはさ、ジャングルの 木の うえで ねるんだ」

トラは、

「おれさまのように おおきく、つよく、美しい けものは ほかに いない」

サイモンは しょんぼり言いました。

「ほんとだ。ぜんぜん ちがいます。・・・にてると おもったんだけど……」

おれたち、にてるところなんか あるか?
ライオン、チータ、ピューマ、クロヒョウ、トラは、お互いを見くらべました。

「みんな、耳は いいよな」

「りっぱな ひげと、長い しっぽ」

「するどい歯、とがった爪」

「真っ暗闇でも よく見えるおおきな目」

みんな、似ている!
      ・・・

サイモンは言いました。

それ ぜんぶ、ぼくも もってます。ちっちゃいですけど!

どれ・・・

あ・・・

ほんとだ・・・

ってことは、おれたち・・・

ねこのなかまだったの!?

     ・・・

「やっぱり、ぼくたち なかまですね」

「ほんとだな!」

それから、みんなで じゃれて はねて、ねこパンチ。

みんなで 遊びました。

ライオン、チータ、ピューマ、クロヒョウ、トラ、そしてサイモンは、 姿・形、足の速さ、生活する場所、からだの模様などみんな違います。でも、みんな同じねこ科の仲間です。みんな違う。でも、みんな同じです。

 

ねこのサイモンたちのはなしでしたが、人間の場合も同様です。人種、性格、生活、文化の違いがありますが、みんな同じ人間です。同じことですが、子どものことにも当てはまります。子どもたちは一人ひとりみんな違います。 でも、みんな同じ子どもです。同じ子どもですが、やはり一人ひとりを見れば、みんな違います。

 

違うところは目につきやすい。でも同じところを見つけるには、ライオン、チータ、ピューマたちがそうだったようによく考えることが必要です。

       ・・・

※『サイモンは、ねこである。』 ガリア・バーンスタイン作、なかがわちひろ訳、あすなろ書房  2017年  (2022/1/8)

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