ふるはしかずおの絵本ブログ3

『えほん遠野物語 きつね』-狐が人を化かす幻想的な世界

遠野の狐が人を化かす、三つのはなしです。

 

   ・・・

第一話

 

菊蔵が、

柏崎の姉の家にでかけ、

みやげに 餅を もらった

帰り道、

すっかり 暗くなってしまった。

林の中に、友人の藤八が 立っていた。

 

 「相撲でもとろうぜ

 

大柄な藤七が、きょうは やけに軽い。

三度とも 投げ飛ばした。

 

 「今晩はもうやめよう」と、藤七が言った。

 

菊蔵は、ハッと気づいた。

餅がない。

 

何日か後に、

藤七に 確かめると、相撲は とっていないという。

あれは、狐だったか

菊蔵は、それを隠していたが、やがてバレてしまい、

みんなに 大いに 笑われた。

    

第二話

 

夜更けに

旅人の男が、

知り合いの家に 泊めて もらうことにした。

 

家の者から、

さっき ばあさんが、死んでしまったので、

村の人を 呼んでくるまで、留守番をたのむと、お願いされた。

男が、囲炉裏の ふちに 座ると・・・

 

 死体が むくむくと 起き上がった。

 

男は、狐の仕業だと思い、

家の裏に まわり、

旅人は、狐を 殴り殺してしまった。

 

 狐が、術を使って、死人をうごかしたのか、

 旅人に 幻覚を みせたのかは、わからない。

 

     ・・・

第三話

 

船越村の漁師が、

峠で 妻と出会った。

おかしい。

妻が、こんなところに いるわけがない。

 

そう思うと、

化け物にしか 見えなくなった。

漁師は、包丁で それを刺し殺した。

死ねば正体を現すはずだが、いつまでも、死骸は妻のままだった。

もしや。

漁師は、いそいで家に帰った。

   

妻は、家にいた。

妻は、言う。

 

 わたしは、夢の中で、峠まで、

 あなたを 迎えにいったところ、

 背中を刺されて、目が覚めた。

 

漁師が、峠に とって返すと、

おんなの死体は、いつのまにか 狐にかわっていた。

 

 狐の話はこれほどまでに さまざまである。

 

  

「遠野の狐も、人を化かす」

夢か、

幻か。

遠野物語の不思議な世界です。怖い話でした。

樋口佳絵さんの絵も、妖しい雰囲気をつくりだしています。

     ・・・

※『えほん遠野物語 きつね』 柳田国男原作、京極夏彦文、樋口佳絵絵、汐文社 2021年 (2023/5/22)

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