きいろのまるが ひとつあります。
きいろのまるを
「おして つぎへ いこう」・・・黄色のまるがふたつになった。
「もういちど…おしてみる」と・・・みっつになります。
「ゆびで そうっと こする」と・・・赤のまるに変化。
「みぎの きいろのまるを こすってみると」・・・青のまるに変化。
「5かい くりっくすると」・・・どうなることでしょう?
想像してみてください。 黄色のまるは、5つにふえます。
・・・
「ほんを ちょっと ゆすってみよう」・・・?
(絵本をご覧ください)
「ひだりに かたむけると」・・・
「ふきとばせる?」・・・
「ほんを まっすぐ たててみて」・・・
「てを たたくと」・・・
最後に拍手かっさい。
すると・・・
・・・
どのページも、絵本の「まる」が、まるで いきているように、動きだします。
実際に、動いているわけではありませんが、動いているように見えるのです。
ことばが、絵に意味と動きをあたえています。
・・・
レオ-ニの『あおくんときいろちゃん』(藤田圭雄訳、至光社)を思いだしました。抽象的なちぎりえ絵ですが、あおくんも、きいろちゃんも、おかあさんも、おとうさんもわかります。
言葉が、ちぎり絵に 意味とストーリーをあたえています。
そして、わたしたちの想像力によって、絵も動きだします。
・・・
『まるまるまるのほん』は、
おしたり、
こすったり、
かたむけたり、
手をたたいたり、
読者が遊びながら楽しむという要素を付け加えています。
「こうする」ことと「こうなる」ことの組み合わせが、とても意外です。
自分がしたことに、絵本がこたえてくれるところが、おもしろいのです。
作者のテュレさんの言葉が ありました。
・・・
「読者がページをめくるたびに、なにかが起こるようにしょう。
取るに足らないもの、たとえばいくつかの小さな点(まさにこの絵本の三つの丸のようなもの)から、ものすごく大きな興奮や驚きを、みんなの目や心に届けられるようにしよう。
子どもたちと話したり、子どもたちが参加できるような、一緒に遊べる絵本をつくろう・・・」
・・・
あたらしい感覚の 絵本です。
わたしは、この絵本を学生から教えてもらいました。
そして、みなさんに、おすすめします。
※ 『まるまるまるのほん』 エルヴェ・テュレ作、谷川俊太郎訳、ポプラ社 2010年