ふるはしかずおの絵本ブログ3

『ラッキーボーイ』-大人が読みたい絵本

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「 ラッキーボーイ 」という名のイヌがいました。

はじめ、ガスティン家に飼われていましたが、名前はありませんでした。「 おい 」と呼ばれていたのです。

その後、となりのおじいさんのイヌになります。

前半と後半で、このイヌはどのように表現されているのでしょうか?

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前半

ガスティン家の人たちにとって、

このイヌは「 おい 」と呼ぶ存在です。

どうして飼われるようになったのか

だれもおぼえていない イヌ。

茶色によごれた イヌ。

家にいれない イヌ。

ドライブにつれていかない イヌ。

いつも臭いといわれている イヌ。

いなくなっても誰も気づかない存在 なのです。

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後半。

となりは、奥さんを亡くした、ミラーさんの家。

愛する妻をうしなって、ふかい孤独を感じています。

そこへやってきたイヌは、

ミラーさんにとって、

天国 から ふって きたのでは ないか 」と思えるのです。

きれいなベツトにのせることのできる イヌ。

イヌのしぐさに笑ってしまう ミラーさん。

「 ラッキーボーイ 」と名づけた イヌ。

話し相手の イヌ。

「 しっかり食べるんだよ!」

「 おまえのおかげで、 わしは幸せを取りもどしたよ! 」

小さな ぼうや 」といえるイヌなのです。

     ・・・

疎外されたイヌと 孤独な老人。ふたりはつらい体験をしました。しかし、ふたりの出会いが、もう一度老人の人生をいきいきとさせます。ラッキーボーイは何もいいません。( イヌですからね。 )でも、ラッキーボーイと老人のあいだには、無言のコミュニケーションがあります。

言葉はなくても

相手をおもいやり

気づかうこころ があります。

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老人はこころを癒しふだんの生活をとりもどしました。ラッキーボーイも、しっぽをピンとあげ、おじいさんと散歩をしています。人生の真実をかたる絵本、愛の溢れる絵本です。

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※ 『 ラッキーボーイ 』  スーザン・ボウズ作、 柳田邦男訳、 評論社 2006年

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