ふるはしかずおの絵本ブログ3

『きょうは おかねが ないひ』- 貧困の問題を考える

おんなのこ(表紙)の視点から描かれた貧困の問題です。

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母子家庭のふたり。

 ママは いっしょうけんめい おしごとをしてるの。

 でも、

 きょうは おかねが ないひ。

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おかねがなくても できる たのしいこと しってる?

 

 図書館で本を読むこと、

 歌の練習をすること、

 ママの服をつかって猫をつくること、

 ハトと追いかけっこ、

 チャリティショップで おしゃれに変身することだってできる。

      

でも、きょうは フードバンクに いかないとね。

 

 ママはフードバンクに行くのが苦手。

 わたしは好き。

 ビスケットとフルーツジュースがもらえて、

 係のおばさんと、ねこのはなしもできるから。

わたしの大好きなシリアル、もらえるかと おばさんにきくと、

ママはこわい顔をします。

おばさんは、

ごめんねと言って、

フードバンクにあるものしかあげられないことを話してくれます。

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帰り道

ふたりは

いつかきっと ごっこ」をします。

「いつかね」とママ。

「うん、いつかね」とわたし。

   

わたしの想像したことが絵( 下の絵 )で表現されています。

 車、洗濯機(家にないのでしょう。)

 好きな服を買うこと

 美味しい甘いものをいっぱい食べること

 猫を飼うこと

 (みんな、今はできないけれど「いつか」したいことです。)

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ママも わたしも いつかは しんぱいとか しないで くらすのよでも、こんやは しんせつな ひちたちの おかげで おなかが いっぱい

貧しい生活ながらも、夢と希望をもって生きるふたり。絵本の「わたし」が健気に生きていることに救われるような気がしました。また、一人称視点ですので、「わたし」の気持ちがよくわかります。そして、わかるだけに切ない気持ちになります。好きなものを買ってあげられない、ママのつらい気持ちを想像します。

 

巻末の「かいせつ」に「日本の子どもの貧困率は、13・5%(2018年)で、約7人に1人の子どもが貧困状態にあります」とありました。コロナ禍のもと貧困問題はさらに深刻化していることでしょう。

「フードバンク」や「子ども食堂」の活動は知っていましたが、 生活に困っている人に弁当などを提供し、医療、労働、生活相談をする 「大人食堂」の活動を知りました。共助だけでなく公助が今こそ求められます。「社会の底が抜けた」と表現される現在の状況です。何ができるのか、深く考えさせられました。

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※『きょうは おかねが ないひ』 ケイト・ミルナー作、こでらあつこ訳 合同出版 2020年  (2021/5/14)

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