アフリカのマラウィが、舞台のおはなし。
マラウィは、タンザニア、モザンビーク、ザンビアに囲まれた、アフリカ南東部に位置する内陸国です。貧しい14歳の少年 ウィリアムが、独学で風車をつくりあげました。実話です。
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雨が降らず、トウモロコシが枯れてしまった。
食べ物がなくなり、みんな、おなかがぺこぺこです。
おとうさんが、言います。
「きょうからは、食事を1日1回にしよう」
「ざんねんだが、学校をやめておくれ」
ウィリアムは、がっかりしましたが、
近くの図書館を思いだしました。
彼は考えることが好きな少年でした。
辞書をかたてに、英語の本を読みはじめます。
そして、風車の本にであいました。
「風車は、電気をうみだしたり、水をくんだりすることができます」
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「よし、風をつかまえて電気を手にいれよう」
ウィリアムは、ゴミ捨て場で材料をさがします。
トラクターの部品
プラスチックのパイプ
ベアリング
ボルト・・・
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みんなは、頭がおかしくなったと噂をします。
でも、友人の助けもかりて、ガラクタでつくった風車はついに完成しました。
塔は、
キリンの首のように ゆらゆらゆれます。
風が来るのをじっとまちます。
風が来て、羽がまわりはじめます。
そして、ついに
「風邪をつかまえて電気を手にいれたぞ」
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つぎは、
地下水のくみあげです。
この水をくみあげることこそ、
ここでは いちばんひつような魔法だったのです。
ウィリアム・カムクワンバくんの行動はひとびとの考えを変え、生活を変えました。「知識は力なり」。フランシス・ベーコンの言葉を実感します。また、なんのために学ぶのかについて考えさせられました。
その後の彼は、あとがきによりますと、アメリカに渡り、ダートマス大学で学んでいます。「エンジニアになるための勉強をし、その後はマラウィにもどり、再生可能エネルギーを使って、村のために発電やかんがい装置をつくろうと計画しています」。
ところで、ウィリアム・カムクワンバくんが出会った本は『エネルギーの利用』というアメリカの教科書でした。また、『 風をつかまえた少年 』( 文藝春秋、2010年 )という本も先に出版されています。この絵本の出版によって、彼の業績はさらにひろく知られることになるでしょう。
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※『 風をつかまえた ウィリアム 』ウィリアム・カムクワンバ、ブライアン・ミーラー文、 エリザベス・ズーノン絵、さくま ゆみこ訳、さ・え・ら書房 2012年 (2018/7/22)