有名な狂言『附子』の絵本化です。
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けちんぼうの主人が、出かけることになりました。
太郎冠者 と 次郎冠者に、留守番を頼みました。
「ぶす」が入っている壺を守れと命じます。
「ぶす」は猛毒、その上を吹いてきた風に当たるだけでも、いのちを失うものと主人は脅します。
(でも、主人はなぜ死なないのでしょうか?)
「あるじおもいの ものだからな。」
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太郎冠者と次郎冠者は興味深々。
扇を使って、風をおこし、「ぶす」に近づく太郎冠者。
「あおげ、あおげ」
「あおぐぞ、あおぐぞ」
「あおげ、あおげ」
「あおぐぞ、あおぐぞ」
太郎冠者と次郎冠者は見つけました。
「ぶす」の中にうまそうなものを。
太郎冠者は、ぶすを舐めはじめます。
アム、アム、アム、アム。
「うもうと たまらん。」
水飴です。
次郎冠者も、
アム、アム、アム、アム。
すっかり食べてしまったふたり。
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さて、この後始末をどうしたらよいのでしょうか?
太郎冠者は名案を考えます。
「あの掛け軸を破れ」
「だいてんもくを打ち割れ」
ふたりは掛け軸と茶碗はめちゃめちゃにしてしまいました。
(でも、どうして)
(それは結末で)
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主人が帰ると、ふたりは大声で泣きはじめました。掛け軸と天目茶碗を壊したので、死んでお詫びをしようと「ぶす」を食べたと言います。
しかし、食べたが死ねません。
「ひとくち くうても しなないの」
「ふたくち くうても しなないの」・・・
「とくち すぎても」
「あら、しねない」
とうとう、ふたりは おとどりはじめました。
からに なるまで くうたけど~
しねないことの おめでたさ~
がんこあたまを ぽん ぽん ぽん~
主人は、こう言ってふたりを追いかけます。
「にがさんぞ、にがさんぞ」
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「附子」はご存知のように狂言の有名な演目です。小学校の「国語」の教科書にも載りました。太郎冠者と次郎冠者の滑稽な仕草と言葉が笑いを誘います。対話劇としての狂言の特徴を生かした内田麟太郎さんの翻案です。また、長谷川義史さんのダイナミックで誇張した絵が、大らかな笑いを盛りたてます。大胆なデザインの衣装も狂言の特徴のひとつですが、長谷川さんは太郎冠者と次郎冠者の羽織の背中にねこを描いています。「見ざる・言わざる・聞かざる」の猫たち。画家の遊びこごろです。附子とは何か、太郎冠者と次郎冠者の企みを説明し、読みかたりを工夫すれば、年長の子どもも十分楽しめることでしょう。
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※『 ぶす 』 内田 麟太郎作、長谷川 義史絵、ポプラ社 2007年 (2019/1/17)