ふるはしかずおの絵本ブログ3

『野うまになったむすめ』- 馬と親戚のわたしたち
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ネイティブ・アメリカンの世界を題材とした絵本。
むすめと野うまの愛の物語です。

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むかし、
馬が大好きなむすめがいました。
むすめは、

馬のすきな草も、
冬の吹雪をのがれるところも知っていました。
馬が怪我をしたら 手当をしてやりました。
そして、家の手伝いを終えると、一日中馬たちとすごしていました。

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ある暑い日、

むすめは、
草はらで眠りこんでしまいました。

おそろしげな雲がひろがり、
稲妻がひかり、
大地が揺れうごきます。
馬の群れは、

風のようにはしりだしました。むすめも馬のくびに抱きつき、逃げだします。そして、嵐がおさまったとき、見たこともない山々の中にいました。
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翌朝、
美しく逞しい雄うまが言います。
「わたしは、このあたりの山にすむ 野うまのかしらだ。ここにすむなら よろこんで なかまにする。」
むすめは喜びました。

村人たちは、むすめを探しまわりました。ふたりの狩人が、ようやく、あの雄うまに率いられた馬たちの中に、むすめを見つけます。雄うまとたたかい、むすめを助けました。
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むすめは、

両親との再会を喜びますが、

しかし、
とても悲しそうで淋しそうです。
病気になったむすめは、両親に言います。
わたしは、野うまたちと かけまわってくらしたいのです。」

雄うまが迎えにきます。
むすめはまた、白いぶちのある雄うまといっしょになり、幸せにくらしたということです。村人たちは、むすめが野うまに変わったと言い伝えました。

 

これはむかしのはなしだ。しかし、いまでもうまとわたしたちがしんせきだとおもうと、たのしいきもちになってくる

 

自然とともに生きるネイティブ・アメリカンの世界観が見えます。ネイティブ・アメリカンの人びと、風俗、馬、虫、鳥とけもの、太陽、気象、花が、しっかりと絵本の中でむすびついています。作者のポール・ゴーフルはイギリス出身ですが、ネイティブ・アメリカンの文化に共感し「ラシュモア山ナショナル・メモリアルで居住地付き画家」となりました。

美しい絵の本です。1979年度コルデコット賞を受賞しました。
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※『野うまになったむすめ』ポール・ゴーフル作、神宮輝夫訳 ほるぷ出版 1980年     (2021/2/9)

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