ふるはしかずおの絵本ブログ3

『海にしずんだクジラ』- 海の底の生態系

70年生きた いっとうの クジラが 死んた。

   

 しずかに 

   ゆっくり 

     しずんでいった。

真っ暗な海の底で、50年に わたって

さまざまな 命を 支えます。

    

  

 クジラを 食べにやってきた

 ヌタウナギ

 オンデンザメ

 イバラヒゲ

 ミゾズワイガニ

 

   

1年半が すぎるころ、

ヨコエビの なかまが、骨についた肉を しゃぶりつくす。

ヨコエビを ねらう  タコが あつまる。

   

エゾイバラガニ

ちいさな甲殻類が あつまる。

ニュウドウカジカは、これらが ごちそうだ。

  

  

 骨になった クジラ。

 でも、まだ 終わらない。

    

   

ホネクイハナムシが、骨に びっしり。

ホネクイハナムシの根に すみつく 共生バクテリア。

骨の油分と タンパク質を とりこむ。

   

 コシオリエビ

 クモヒトデ

 ハゲナマコ

   

バクテリアは、

骨をたべて、ガスをだす。

そのガスを栄養にして、深海微生物たちが そだっていく。

   

微生物をたべる マキガイ、カサガイ、ウロコムシ

   

    

やがて

クジラは 食べつくされた。

クジラの死体は、海の底の オアシスとして、

何百万もの 命を 支えつづけた。

そして・・・

 

 あたらしい命の輪が、はじまる。

   

      ・・・

クジラの死体に集まる、何百種類の生きものたち。一頭のクジラが、50年の間、さまざまな生物の命を支えるという事実に圧倒されます。自然の循環、自然の奥深さを考えます。

      

「解説」によれば、絵本に描かれた現象は「鯨骨生物群集」です。1987年にカルフォルニアで発見されるまで、このことは知られていませんでした。また、毎年、およそ7万頭のクジラが、自然死して海底にしずんでいます。

   

真っ暗な海の底に、豊かな、命のつながりがありました。

       

      ・・・

※『海にしずんだクジラ』 メリッサ・スチュワート文、ロブ・ダンラヴィ絵、千葉茂樹訳 BL出版 2023年  (2023/8/27)

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