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中国の昔話です。
・・・
ランフーという若者が、月夜の晩に、山へ草刈りにいきます。
すると、山道が、どこまでも どこまでも 光っています。
近づいてみると、なんと、
それは、金貨です。
銀色の髪のおばあさんが、現れます。
「こんやは、八月の十五夜さまで、山の神が、月の光に、金貨をさらす日じゃ。ランフーよ。うんよく それにであったから、これをあげよう」
おばあさんは、金貨を三枚、ランフーにあげます。
・・・
ランフーが、
振り返って見ると、金貨は キラキラ輝いています。
「神さまのばあさま。どうか、もうちょっとくだされ。うちはびんぼうで、こまっているから」。
おばあさんは、金貨をもう三枚あげます。
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帰りかけますが、
ランフーは、金貨の所へもう一度戻ります。
不思議なおばあさんは、もう見えません。
ランフーは、かごの草を捨て、金貨をかごに詰め込みました。
帰る途中、橋の上で一休み。
ランフーは考えました。
家にある10倍も大きなかごを持ってこようと。
そして、金貨をつめたかごを…
「こんなしょいかごをしょって あるいていちゃ、のろくて たまらん・・・めんどうくさい。すてちまえ」
・・・
ランフーの欲望は、どんどん大きくなります。
大きなかごのあとは、
かみさん、
じいさまとばあさま、
むすこにむすめ、
ぶた、
いぬ、
こやぎ、
ひよこまで連れて金貨を集めにでかけます。
・・・
山の金貨にもう一歩のところまで来たとき、月は山の向こうに落ち、金貨はいっぺんに消えてしまいました。
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おかみさん、じいさま、ばあさま、むすこ、むすめは、ため息をつき、ぼやき、口をとがらせ、肩を落とし、ふくれます。
ぶた、
いぬ、
こやぎ、
ひよこたちは言いました。
「あーあ、きんかは ともかく あの しょいかごだけでも すてなきゃよかったのにね」
・・・
ランフー、おかみさん、じいさま、ばあさま、むす子にむすめの人物たちは、みんな金貨のことで頭がいっぱいです。金貨があるのは月の光があるときだけだということを忘れています。欲に目がくらんで、まわりが見えないのです。できごとは現実離れしていますが、ランフーたちの行為はわたしたちの欲望の姿です。
大欲は無欲に似たり。
「欲の深い者は欲のために目がくらんで損をしがちで、結局は無欲の人と同じ結果となる」(大辞林 第三版)
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※『山いっぱいのきんか』君島久子作、太田大八絵、童話館出版 2005年 (2019/11/25)