イスラム教徒の女性が巻くヒジャブ。初めてヒジャブをつけて、姉が学校に行く日のことを妹(わたし)の視点から描いています。
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今日は、ねえさんのアシヤがヒジャブをえらぶ日。
アシヤは、青いヒジャブを選んだ。
それは、まぶしい海の色。
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きょうは、新学期。
アシヤは、はじめて青いヒジャブをつけて、学校に行く。
青いヒジャブをつけたアシヤは、まるでプリンセス。
わたしも、青にしよう。
(妹の私の視点から書かれています)
「ヒジャブをつけると、強くなるの」とママが言っていた。
でも、
学校では、ゲラゲラ笑う男の子の声が聞こえます。
「そのテーブルクロス、頭からひっぱって、はずしてやろうか!」と怒鳴る声。
その時、妹のファイザーはママの言葉を思いだします。
「いじわるな言葉は、それを言った人のものなのよ」
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学校が終わると、わたしを待ってるアシヤが見えた。
アシヤは、笑っている。
ねえさんは強い。
わたしたちは手をつないで帰ります。
アシヤのヒジャブは、海みたい、空みたい。
どこまでもつづく青に、さかいめなんてない。
ヒジャブを通して異文化への理解を深めます。青いヒジャブには深い意味がありました。海と空の青は「どこまでもつづ」き、その「青に、さかいめなんてない」のです。青いヒジャブは、海と空の青、海と空の広さを表現しています。そして、アシヤとわたしを結びつけています。青は、差別のない世界を象徴しています。
尊敬する姉への思いが、妹の視点からいきいきと書かれています。また、ママの深い知恵もありました。「ヒジャブのことを、わかってくれない人もいるでしょう。でも、いつの日か、うけいれてもらえる。あなたが、どんな自分になりたいかわかっていれば」と言うママの言葉は、ふたりを励まし勇気づける言葉です。偏見や差別と戦う、アメリカに住むイスラム教徒の女性の現状も分かりました。偏見、差別、いじめの問題を考える1冊です。
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※『ねえさんの青いヒジャブ』イブティハージ・ムハンマド&S・K・アリ作、ハテム・アリ絵、野坂悦子訳、BL出版 2020年
【 追 記 】
作者のイブティハージ・ムハンマドさんは、アメリカ代表として初めてヒジャブをつけてオリンピックに参加しました。2016年リオデジャネイロ・オリンピックで、フェンシング女子サーブル団体戦で銅メダルを獲得しました。 (2021/12/23)