戦争のため、住みなれた町を離れなければならなくなった、ソエのはなしです。
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町を離れる、前の晩、
ソエは、町の地図を ひろげます。
楽しいことがあった場所に しるしをつけてみました。
じぶんの家
学校
仲良しのクラスメイトの名前
教室
新しいことをならうのが 楽しみだった
図書館と本屋さん
公園
木立にかこまれた、花咲く 公園
いっぱいあそんだ 公園
いろんな動物がいる、都会のまんなかの みどりの島
映画館
川
川にかかる北の橋
その場所を 赤えんぴつで つなぐと・・・
ZOE
自分の名前が、現れました。
ソエは、びっくりします。
涙が こみあげてきます。
偶然なの?
意味があるの?
それは、町がくれた
お別れの、プレゼントのようです。
ソエは、「しあわせな時の地図」を、かばんに しまいました。
戦争がおわって、もどってくる その日のために。
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「わたしは、むかしから、日常のささやかな喜びを語った本が好きでした」。「作者のことば」です。この絵本は、作者の言葉のとおりの絵本です。そして、戦争のかなしさ、未来を奪う戦争の不条理をしずかに訴えます。町は破壊されました。しかし、地図とともにあるソエの記憶は消えはしません。
ソエという名前は、ギリシャ語で「命」「人生」を意味します(作者のことば)。
いま、数え切れない多くの、ソエがいます。町を破壊する戦争が起こっています。多くのいのち、多くの生活、多くのひとの未来を奪っています。
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※『しあわせなときの地図』 フラン・ヌニョ文、ズザンナ・セレイ絵、宇野和美訳、ほるぷ出版 2020年 (2023/10/29)