ふるはしかずおの絵本ブログ3

『しあわせなときの地図』- 地図の記憶は消えない

戦争のため、住みなれた町を離れなければならなくなった、ソエのはなしです。

     

     ・・・

町を離れる、前の晩、

ソエは、町の地図を ひろげます。

楽しいことがあった場所に しるしをつけてみました。

 

 じぶんの家

    

 学校

  仲良しのクラスメイトの名前

  教室

  新しいことをならうのが 楽しみだった

    

 図書館と本屋さん

 

 公園

  木立にかこまれた、花咲く 公園

  いっぱいあそんだ 公園

  いろんな動物がいる、都会のまんなかの みどりの島

 

 映画館

 川 

 川にかかる北の橋

    

 

その場所を 赤えんぴつで つなぐと・・・

  

   ZOE

   

自分の名前が、現れました。

ソエは、びっくりします。

涙が こみあげてきます。

  

 偶然なの?

 意味があるの?

   

それは、町がくれた

お別れの、プレゼントのようです。

ソエは、「しあわせな時の地図」を、かばんに しまいました。

戦争がおわって、もどってくる その日のために。

     

         ・・・

「わたしは、むかしから、日常のささやかな喜びを語った本が好きでした」。「作者のことば」です。この絵本は、作者の言葉のとおりの絵本です。そして、戦争のかなしさ、未来を奪う戦争の不条理をしずかに訴えます。町は破壊されました。しかし、地図とともにあるソエの記憶は消えはしません。

     

ソエという名前は、ギリシャ語で「命」「人生」を意味します(作者のことば)。

    

いま、数え切れない多くの、ソエがいます。町を破壊する戦争が起こっています。多くのいのち、多くの生活、多くのひとの未来を奪っています。

 

          ・・・

※『しあわせなときの地図』 フラン・ヌニョ文、ズザンナ・セレイ絵、宇野和美訳、ほるぷ出版 2020年  (2023/10/29)

SHARE