おんなのこ(表紙)の視点から描かれた貧困の問題です。
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母子家庭のふたり。
ママは いっしょうけんめい おしごとをしてるの。
でも、
きょうは おかねが ないひ。
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おかねがなくても できる たのしいこと しってる?
図書館で本を読むこと、
歌の練習をすること、
ママの服をつかって猫をつくること、
ハトと追いかけっこ、
チャリティショップで おしゃれに変身することだってできる。
でも、きょうは フードバンクに いかないとね。
ママはフードバンクに行くのが苦手。
わたしは好き。
ビスケットとフルーツジュースがもらえて、
係のおばさんと、ねこのはなしもできるから。
わたしの大好きなシリアル、もらえるかと おばさんにきくと、
ママはこわい顔をします。
おばさんは、
ごめんねと言って、
フードバンクにあるものしかあげられないことを話してくれます。
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帰り道
ふたりは
「いつかきっと ごっこ」をします。
「いつかね」とママ。
「うん、いつかね」とわたし。
わたしの想像したことが絵( 下の絵 )で表現されています。
車、洗濯機(家にないのでしょう。)
好きな服を買うこと
美味しい甘いものをいっぱい食べること
猫を飼うこと
(みんな、今はできないけれど「いつか」したいことです。)
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ママも わたしも いつかは しんぱいとか しないで くらすのよ。でも、こんやは しんせつな ひちたちの おかげで おなかが いっぱい。
貧しい生活ながらも、夢と希望をもって生きるふたり。絵本の「わたし」が健気に生きていることに救われるような気がしました。また、一人称視点ですので、「わたし」の気持ちがよくわかります。そして、わかるだけに切ない気持ちになります。好きなものを買ってあげられない、ママのつらい気持ちを想像します。
巻末の「かいせつ」に「日本の子どもの貧困率は、13・5%(2018年)で、約7人に1人の子どもが貧困状態にあります」とありました。コロナ禍のもと貧困問題はさらに深刻化していることでしょう。
「フードバンク」や「子ども食堂」の活動は知っていましたが、 生活に困っている人に弁当などを提供し、医療、労働、生活相談をする 「大人食堂」の活動を知りました。共助だけでなく公助が今こそ求められます。「社会の底が抜けた」と表現される現在の状況です。何ができるのか、深く考えさせられました。
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※『きょうは おかねが ないひ』 ケイト・ミルナー作、こでらあつこ訳 合同出版 2020年 (2021/5/14)