ギリシャの昔話です。
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ギリシャの国の アレテイ姫に、
つぎつぎに 求婚者があらわれます。
でも、どの人も 好きになれません。
そこで、姫は 思いつきました。
「自分で 恋人をつくれば、いいのよね!」
姫は、小麦粉、砂糖、アーモンドを捏ね、男の人の形にします。神様に願い、40日後にあらわれた男の人は、普通の人の5ばいも美しく、10ばいもやさしい人でした。姫は、セモリナ・セモリナスさまと呼びました。
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はるか遠く国の 女王が、
セモリナ・セモリナスさまを
さらって しまいました。
アレテイ姫は、彼を探す長い旅に出ました。
3度の 繰りかえしです。
1
世界の果てで、月のおかあさんに 会いました。
月の親子は、セモリナ・セモリナスのことを 知りませんでした。
でも、別れ際に アーモンドを ひとつあげました。
「こまったときは、これをわりなさい」
2
お日様の親子も、セモリナ・セモリナスのことを 知りませんでした。
でも、別れ際に、クルミを ひとつあげました。
「こまったときは、これをわりなさい」
3
星のおかあさんと星のきょうだいたちにも 会いました。
「見たよ」と いちばん小さな星が言いました。
小さな星は道を教えて、はしばみの実を ひとつあげました。
「こまったときは、これをわりなさい」
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後半です。
アレテイ姫は、
セモリナ・セモリナスさまを 見つけました。
姫は、アーモンドの実を 割りました。
つむぎ車が あらわれます。
金の糸を 紡ぎだす、不思議なつむぎ車。
つむぎ車は、女王に奪われますが、
セモリナ・セモリナスさまに、
一晩だけ会うことを 許されました。
でも、
セモリナ・セモリナスさまは、眠り薬を飲まされ、眠っています。
つぎの夜に、
クルミの実を 割ると、
銀の めんどりが あらわれます。
つぎの夜に、
はしばみの実を 割ると、
銅の カーネーションが 出てきまた。
女王は、
銀のめんどりも、銅のカーネーションも とりあげますが、
セモリナ・セモリナスさまに 会うことを 許しました。
3回目は、
セモリナ・セモリナスさまは、眠り薬を 飲んだふり。
ふたりは、後ろを振り返らずに 逃げました。
そして、ギリシャで、幸せにくらしということです。
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長い話ですので、だいぶ端折りましたが、昔話の骨格をしっかり備えています。『昔話の形態学』(1928)のウラジミール・プロップの理論を借りれば、絵本は、「欠如」「主人公の出発」「魔法手段の獲得」「闘争」「勝利」「主人公の帰還」などの機能分類で分析することもできるでしょう。
また、ジゼル・ポター の絵は独特です。好みが分かれるかもしれませんが、この絵本は、彼女のデビュー作でした。彼女の絵本、『ほんとうのことを言ってもいいの』( パトリシア C.マキサック文、ジゼル・ポター 絵、BL出版 )を、以前紹介しています。
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※『うるわしのセモリナ・セモリナス』 アンソニー・L・マンナ クリストドウラ・ミタキドウ作、ジゼル・ポター絵、木村由利子訳、BL出版 2000年 (2023/11/5)