ふたりのりえの はなし。ファンタジーの絵本です。
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りえは、
なわとびのひもを 公園に 忘れてしまいました。
「あたし、とってくる」
「ぼくも いくよう」
弟の けんちゃんが、言いました。
公園につくと、
きつねの子たちが、なわとびをして 遊んでいます。
ふたりは 木の陰に かくれますが・・・
「こんにちは」
「こんにちは」
「いっしょに あそぼ」
「なわとびをしよう」
りえとけんちゃんは、きつねの子たちと なわとびをして遊びます。
なわとびのひもは、りえのものでした。
なあんだ。
あたしのひも、ここに あったのね。
でも、
きつねの子は、
なわとびのひもは、神様が くれたというのです。
神様に お祈りしてたら、
公園の 木の枝に かけてあったというのです。
「わたしの なまえまで かいてあるの」
「え。あんた、りえちゃんなの?」
きつねの子の 名前も りえです。
りえは、
なわとびのひもを 置いていくことに しました。
「さよなら」
「さよなら」
帰り道、けんちゃんが 言います。
「おねえちゃんは、きつねの かみさまだあ。くくくっ」
りえは、
けんちゃんといっしょに 笑いながら、
きつねの りえちゃんの嬉しそうな顔が うかんだのでした。
現実と非現実の境目があいまいなファンタジーの世界です。その世界で、ふたりの「りえ」が結びつきました。あまんきみこさんのこころ温まる世界です。くっきりとした印象の酒井駒子さんの絵は、ファンタジックな世界に、リアリティを与えています。
おふたりの作風は、やや異質な感じがします。ふたりの異質な作風が融合して、あじわいある、素敵な世界となりました。ふたりをマッチングしたのは、編集者です。編集者もこの世界の作り手のひとりといえます。
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※「きつねのかみさま」 あまん きみこ作、酒井駒子絵、ポプラ社 2003年 (2023/10/31)