ふるはしかずおの絵本ブログ3

『さっちゃんのまほうのて』

「まほうのて」って、どんな手でしょう。

『さっちゃんのまほうのて』は、そんな不思議な題名をもつ絵本です。

  

    

さっちゃんの右手には、生まれつき、指がありません。

さっちゃんは、

幼稚園の ままごとで 

おかあさん役を やってみたい、と思いました

でも、

   

 「さっちゃんは おかあさんには なれないよ! 

  だって てのないおかあさんなんて へんだもん。」

    

 「みんな だいっきらい」

 

 

さっちゃんは、

幼稚園を飛び出し、家にもどりました。

おかあさんに 言いました。

 

 「どうして みんなみたいに ゆびが ないの? どうしてなの?」

 「だれにも わからないの」

 「さっちゃんの手、小学生になったら普通の手になるの?」

       

       

おかあさんは、思いきって 言いました。

    

 「さちこのては、小学生になっても 今のままだよ・・・

  でもね、おかあさんのだいすきな さちこの 

  かわいい かわいい手 なんだから・・・」

      

 「いやだ こんなては いやだ」

     

おかあさんの目に 涙があふれました。

 

ようちえんに 行かなくなった さっちゃん

おかあさんに 赤ちゃんが 生まれ

お姉さんになった さっちゃん

病院からの 帰り道

 

  

 「おとうさん、さっちゃんは、おかあさんに なれるかな」

 「なれるとも」

   

おとうさんは

さちこの手から、不思議な力が やってくる

まほうのてだね」と言います。

 

    

次の日、さっちゃんの家に

幼稚園の あばれん坊の 

あきらくんが やってきて、「これ、あげる」と言いました

ハートの形の チョコレートです

けいこ先生も やってきて、たなばたの劇で

「おほしさま」になってほしいと言いました

    

        

あした ようちえんに いくんだ

ジャングル・ジムだって のぼりたいな

てっぺんで「ヤッホー」と 手をふると

あきらくん どんなかお するかな・・・

と、さっちゃんは 思いました

     

            

「さっちゃんの手、小学生になったら普通の手になるの?」。

さっちゃんの切実な願いがこめられています。「てのないおかあさんなんて へんだもん」と言われたさっちゃんは、自分の手を「いやだ」と思います。けれども、おとうさんは言いました。さちこの手から不思議な力がやってくる、「まほうのてだね」。

    

同じ手なのに、見る人によって、その意味が違います。そして、あきらくんがハートの形のチョコレートを持ってきてくれます。けいこ先生は、たなばたの劇で「おほしさま」になってほしいと言います。さっちゃんは思いました。「あした ようちえんに いくんだ」。

    

さっちゃんの手を大切に見てくれる家族や友だち、先生がいます。さっちゃん自身も、自分の手を見る目を少しずつ変えていきます。読者もまた、「あした ようちえんに いくんだ」と思うさっちゃんのそばにいるような気持ちになります。

      

この絵本は、人と人とのつながりの大切さを、静かに伝えてくれる一冊です。田畑精一さんと「先天性四肢障害児父母の会」、野辺明子さん、志沢小夜子さんによる共同制作です。

      

※『さっちゃんのまほうのて』 田畑誠一作・絵 偕成社 1985年  (2026/9/23)

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