
伊勢英子さんのファンタジー絵本です。
夏休みのおわりに
のんちゃんは
おかあさんとふたりで とまり町から ひっこしてきました
おかあさんが お仕事で でかけます
のんちゃんは
2階のダンボールの なかに
赤い トイピアノを みつけました
5歳の誕生日に
おとうさんが 買ってくれた ピアノです
高い「ラ」の音が ならなくなったので
いつのまにか、ひかなくなった トイピアノでした
のんちゃんは
おとうさんにならった「カノン」を ひいてみます
すると
どこか遠くから、「カノン」のメロディが きこえてきます
となりの森のほうから きこえてきます
のんちゃんは
トイピアノを もって 森のおくに はいりました
「カノン」を ひくと
また きこえてきます
音のする方へ いってみると・・・
そこは 森ではなく
ひろい お庭でした
ふるい お屋敷が ありました
「どんな人が ひいているんだろう」
デッキの階段を のぼると
「おはいり」と 燕尾服の おじいさんが
ピアノの手を とめて いいました
「モーツァルトを しっているかい?」
「なにか、いっしょに ひいてみようか」
「きらきら星」
ふたりの音は なかよく お話しするように ひびきあいました

「さいごに、もう1曲、きいてもらえるかな」
天から おりてくるような音楽でした
「そろそろ、おうちにかえらなければね・・・」
その夜
のんちゃんが「きらきら星」をひくと
〈あっ、ラの音がなっている!〉
のんちゃんは、おかあさんといっしょにピアノを習うことになります。のんちゃんの家庭は母子家庭のようです。おとうさんはヴァイオリンを弾いていました。のんちゃんには、おとうさんとのしあわせな時間をたくさんもっていたことが、絵本からわかります。
のんちゃんの喪失感を癒すような、おじいさんのピアノの調べです。おじいさんのピアノ、おとうさんのヴァイオリンを追いかけて、のんちゃんどのどのような音楽をはじめるのでしょうか。のんちゃんのあたらしい生活に希望が感じられる終わり方です。
「カノン」とは、あるメロディを、すこし時間をずらして他の声部が追いかけていく音楽形式です。「かえるの合唱」がわかりやすい例です。おじいさんのピアノ、おとうさんのヴァイオリン、のんちゃんの赤いトイピアノの音楽は、ある意味、絵本の「カノン」になっているようです。
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※『ピアノ』 いせひでこ作、偕成社 2023年 (2025/12/17)









