ふるはしかずおの絵本ブログ3

『エミリー』-「天使はいつもとなりに家をかりる」

アメリカの詩人、エミリー・ディキンソン(1830-1886)と少女(わたし)との出会いを描いた絵本です。

   

   

わたしの家の むかいの 黄色い家に

「なぞの女性」が すんでいます。

彼女は、20年ちかく 家の外に 出たことがありません

   

    

ある日

ママのところに 「なぞの女性」の住む家から 

ピアノを 弾いて ほしいという

手紙が とどきました

  

   

ママが 出かけるとき

わたしも ついていきました

   

 「姉は、ちょっと ぐあいがわるいので 

 上で うかがわせて いただいております」

  

   

ママは ピアノを 弾きました

階段の上から、かすかな 拍手が 聞こえてきました

「もっと ひいてください」という

ちいさな 女の子のような声が しました

  

   

わたしは 階段を のぼりました

   

 「いたずら おちびちゃん

 その人が いいました

    

膝のうえの 紙をみて ききました

   

 「それ詩なの?

    

 「いいえ、詩はあなた。

  これは、詩になろうとしているだけ」

   

 「わたし、春を もってきてあげたの」

  ポケットから、ユリの球根を ふたつ あげました

   

 「わたしも なにか さしあげなくては」

     

       

その人は、なにかが書かれた紙(下の詩)を くれました

りょうほうとも、そのうち きっと花ひらくでしょう

と言って

    

 

まもなく、春が きました

わたしは ユリの球根を うえました

やがて 真っ白なユリが さくでしょう

     

   

  天国をみつけられなければ ―― 地上で ――

  天上でもみつけられないでしょう ――

  たとえどこへうつりすんでも

  天使はいつもとなりに家をかりるのですから ――

              愛をこめて

                エミリー

    

             ・・・

20年間、父親の屋敷の外には出ようとしなかったエミリー・ディキンソン(1830-1886)について、作者は「あとがき」で、こんな説明をしています。「エミリーは・・・子どもたちとはいつもなかよしでした。・・・エミリーと話したことのある子どもたちは、エミリーはなにかにつけてすぐににこにこし、たのしそうに目をかがやかせる人だったといっています」

      

「その人」も「わたし」も雪とおなじくまっ白い服を着ています。球根は、まっ白いユリで、花言葉は「純潔」「威厳」です。「白」は、象徴的な意味をもっています。

      

エミリーの死後、1800編近い詩が、妹によって発見されました。

上の詩は “If Heaven were not attainable –” 

「天国」があるのなら、それは「となりの家」に、この世界のすぐ隣にあるはずとうたっています。この詩は、絵本の内容と響きあっています。

      

             ・・・

※『エミリー』 マイケル・ビダード文、バーバラ・クーニー絵、掛川恭子訳、ほるぷ出版 1993年  (2025/12/21)

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