ふるはしかずおの絵本ブログ3

『エイドリアンはぜったいウソをついている』- 他者を理解する

エイドリアンに対する「わたし」の気持ちが、かわっていきました。

 

   

エイドリアンは、いつも ひとりですわって、

ぼんやり 考えごと。

そして、みんなに 言いふらす。

     

 「うちには 馬がいるんだよ

     
わたしは、そんなの 信じない。

母さんに はなしを すると

   

 「どうして ウソって わかるの?

  わが家の ものしりおじょうさん」

    

お金がなくて、靴だって あながあいている。

エイドリアンには、ぜったい ムリ。

   

 「馬が いるはずないもん」

 

    

学校で、エイドリアンは みんなに言った。

   

 「すごく きれいな馬なんだ。毛なみは まっ白でさ、

  たてかみは 金色。

  それに、目は、世界中のどんな馬よりも 大きくて とび色・・・」

   

    

犬の ガブガブと 散歩の途中、

わたしは、

エイドリアンと 会った。

ちっぽけな 家。

こんなところに 馬はいない。ぜったいに。

   

    

でも、

ことばが、のどにこみあけて、ぐるぐるからまった。

〈やっぱり 馬は いないよね〉という言葉を のみこんだ。

かわりに こういった。

   

 「馬は とおくに いるんでしょ?

    

エイドリアンが はなしはじめた。

   

 「毛なみは まっ白でね、

  たてかみは 金色。

  それに、目は、世界中のどんな馬よりも 大きくて とび色でさ・・・」

     

    

わたしは 思った。

    

 「エイドリアンは 学校にいるだれよりも 

  すごい そうぞうりょくの もちぬしなのかも」

    

 「エイドリアンの心には きっと 世界中のだれよりも 

  きれいな馬が いるのかも」って。

     

        ・・・

エイドリアンに対する「わたし」の気持ちをえがいた一人称視点です。一人称視点は「わたし」(視点人物)のこころの変化を読みとることがたいせつです。エイドリアンをウソつきだと思っている「わたし」。さいごは、エイドリアンの想像の世界には馬がいることを理解しました。他者を理解する難しさとたいせつさが表現されています。

        ・・・

※『エイドリアンはぜったいウソをついている』 マーシー・キャンベル文、コリーナ・ルーケン絵、服部雄一郎訳 岩波書店  2021年  (2024/6/16)

SHARE