
佐野洋子さんの絵本には ユーモアが あります。
『 おじさんの かさ 』 も そのひとつです。
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【前半】
おじさんは、 かさがぬれるので、
雨の日に、
かさを
さしません。
雨が ふっているのに、かさを かかえて、でかけるです。
変なおじさん。
おじさんのかさは「りっぱな かさ」です。
「くろくて ほそくて、 ぴかぴか ひかった つえのよう」。
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おじさんは、 かさを道具( 用 )としてではなく、美しく 立派なもの( 美 )として みています。でも、 かさは、 雨に ぬれないための道具です。それが常識です。おじさんの行動は常識とずれていますが、そこにおかしさ(ユーモア)が あります。
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【後半】
子どもたちが 楽しそうに歌います。
雨がふったら、 ぽんぽろろん。
雨がふったら、 ぴっちゃんちゃん。
子どもたちの歌につられて、
おじさんは、思わず かさを開いてしまいました。 かさを さして雨の中に入っていきます。
りっぱな かさは、りっぱなに ぬれていました。
おじさんは、 ぬれたかさを「りっぱに ぬれて」と見ているのです。
ここも、ユーモア。
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おじさんは大真面目。読者の常識とのくいちがいが、ユーモアを生んでいます。常識とは異なる言動をするおじさん。
でも、憎めない人物です。
( どうしてでしょう ? )
美しいもの、
素晴らしいものを
大事にして楽しむ人物だからです。
自分にとって価値あるものは、たいせつにしておきたいものです。これはだれにでもある心情です。
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※ 『 おじさんの かさ 』 佐野洋子作・絵、講談社 1992年