五月。
綿毛を 飛ばした タンポポの茎で、 ひとつの実験を してみました。もともと、 それは、子どもの遊びに すぎないものでした。その実験とは、タンポポの 茎を 短く切って、両はじに、 いくつかの 切れ目を入れて、水につけるというものです。
すると、 どうなるのでしょうか。
切れ目を入れた部分が、 そり返り、鼓(つづみ)のような形になりました。実はこれがタンポポの名の由来を説くものなのです。
柳田國男の『 野草雑記 』 のなかに、「蒲公英」という論文があります。タンポポの方言と語源を考察した論文ですが、タンポポの名の由来について興味ある説を展開しています。
「 タンポポは もと鼓を意味する 小児語であった。 命名の動機は まさしく あの音の写生に あった。 それが 第二段に 形の鼓と近い 草の花に 転用せられることに なったかと 思われる 」。
柳田國男の言う「 鼓に近い草の花 」とは、
いま、わたしが実験したタンポポのことです。
また、その実験は、
「タンポポの茎を折って両方を少し割り、それを水の中に入れて、その外皮の円く反りかえるのを見ている遊び」 であったのです。「子供でなければそのような気の永い見物はできないと思う」と指摘しています。
タンポポのなまえは、
鼓を打つときの 「 タン・ポンポン 」 という音に 由来しています。
タンポポの茎を使って、
鼓の形になるのを喜んでいた子どもの遊びを、
「タンポンポン」 と呼んでいたものが、
いつしか、タンポポになったものであろうと言うわけです。
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タンポポのなまえの由来については、このほかに
「タンポ穂」 説 (牧野富太郎)、
「タナホホ」 説 (『大言海』の大槻文彦)、
漢名説 (与謝野寛) などがあって、定説はありません。
しかし、
「鼓に見立てその音を擬した小児語」だとする説が現在有力です。
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タンポポは、自然観察のためのよい教材です。
図書館で5冊の「タンポポ」の絵本を見つけました。
『たんぽぽ』 平山和子ぶん・え、北村四郎監修、 福音館書店
『たんぽぽ』 甲斐信枝作・絵、金の星社
『タンポポ』 七尾純・七尾企画、偕成社
『タンポポ』 平野隆久、岩崎書店
『タンポポ』 バーリィ・ワッツ文と写真、舟木秋子訳、金井弘夫日本語監修 (評論社) 冒頭のタンポポの写真はこの絵本です。
( 写真は甲斐信枝作・絵 『たんぽぽ』 )
どの絵本も個性的で、内容もすばらしいものでした。
平山和子さんの『たんぽぽ』 は、たんぽぽの根を描いたところや、綿毛が風にのって飛ぶところの絵が素敵でしだ。
また、タンポポの種は「アリのだいじな冬のえさ」 になります。七尾純さんの絵本にはタンポポの種を運んでいるアリの写真が載せられています。 (2013/8/25)