ふるはしかずおの絵本ブログ3

『 むかし、ねずみが… 』- で、どうなるの?

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インドに 古くから伝わる 寓話です。
・・・
ある日、インドの 行者が
おおきい ということ
ちいさい ということ
 について
かんがえに ふけっていますと・・・
突然、
ねずみが はしりぬけて いきます。
行者は、カラスに つかまりそうな ねずみを助け 育てます。
・・・
ところが、
こんどは
ねこが ねずみを ねらって ちかづいてきます。

行者は、魔法をつかって ねずみを 強そうなねこに 変えました。
その夜、
森で いぬが 吠えると
行者は、
「おおきく する」ことを 深く かんがえずに
ねこを おおきな いぬにかえました。
・・・
こんどは、とらが そのいぬを 襲うと、
行者は、両手をひろげ、いぬを 堂々とした とらに 変えました。
とらが どんなに とくいになったか、おわかりでしょう!
森を のしあるき
威張り散らす とら。
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行者は、とらの 振る舞いを しかりつけますが、
とらは 考えます。
・・・
この おれさまが むかしねずみだったなどと、
だれにも いわせるものか。
あいつを ころしてやろう!

おろかものめ!
もりへかえって もとの ねずみに なるがよい!

・・・
とらは、ちいさな ねずみにもどり
もりに かけこみ 二度と すがたを あらわしませんでした。

そして、
行者は、
おおきい ということ
ちいさい ということ について かんがえを ふかめた ということです。
・・・
教訓的で、哲学的なおはなしでした。「おおきい」「ちいさい」は相対的です。ねずみは、からだがおおきくり、とらになると、傲慢になり横柄な態度をとりはじめました。こころが貧しく、ちいさくなったとも言えます。「おおきくなる」と「ちいさくなる」は、同時に起こりました。大小は、論理学では反対概念ですが、人間の世界では「おおきい」は「ちいさい」を、「ちいさい」は「おおきい」を含んでいるのかもしれません。『 マクベス 』の魔女の 有名なせりふ、「 フェア・イズ・ファウル … 」を捩っていえば、「 おおきいは ちいさい、ちいさいは おおきい 」。( … うーん。 )
マーシャ・ブラウンは、この絵本で 1962年コルデコット賞を 受賞しました。
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※『 むかし、ねずみが… 』 マーシャ・ブラウン作、晴海 耕平訳、童話館出版 1994年  (2017/9/28)

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