うつくしい日本民話です。
雪ふかい山里に住むよ平は、貧しいまずしひとり暮らしの若者ででした。
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冬のある日、
つばさに矢をうけた、鶴をたすけました。
その夜 おそく、
戸をたたくものがあります。
あけると、
ひとりの美しいむすめが たっています。
女房にしてくださいまし。
むすめは、はたを織ることをねがいます。
そして、三日三晩、
とんから とんから、
織りつづけ ました。
けして のぞき見なさいませんように。
よ平は、その織物を金にかえ、ふたりはたのしくすごしました。しかし、お金が少なくなると、はたを織ってほしいと言い出しかねているよ平に、むすめが言います。
もう一どだけ、 はたを織りましょう。
でも もう、 これっきりにしてくださいまし。
こんどは
四日四晩 かかりました。
よ平は、男にもうけばなしを吹きこまれ、お金のことばかり言い出すようになります。
むすめは、もう一度だけ、
はたを織ることにします。
二どと ふたたび織れませんけれど。
ごしょうですから、 けして、のぞかずに。
とんから とんから、
五日目。
のぞかずにとあれほど言われたのに、よ平は障子に手をかけました。
「 あ 」
彼の見た むすめとは?
一羽の鶴。
あなたの おやさしい心が したわしく、
それだけを たよりに、
おそばに うかがったのでした。
どうぞ 末長く、 おしあわせに
そして、鶴は、一反の織物をのこして飛びさるのでした。
「鶴の恩返し」でしょうか ? 否。
むすめの愛の姿が描かれています。愛すればこそのかなしい別れです。
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※『 つる にょうぼう 』 矢川澄子再話 赤羽末吉絵 福音館書店 1979