児童労働をテーマにした絵本です。
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西アフリカのガーナの「そのこ」。
カカオの収穫のため働いています。
語り手は日本にいる「ぼく」。
「そのこ」と「ぼく」の人物の日常を重ねあわせながら、児童労働の問題を訴えます。
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そのこは、
どんな顔をしているのでしょう。
どんな表情なのでしょうか。
わたしたちから見えません。
後ろ向きであったり、顔の表情が描かれていないのです。
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わかることは、
いつも汗水をたらし働いていること、
学校にいけないこと、
子どもなのにお金をかせいでいること、
そのこの稼いだお金で、家族が食べ物を買っていることです。
日本にいる ぼくは、
友達とあそび、
学校でまなび、
おとなが稼いでくれるお金でゲームを買っています。
でも、ぼくは考えるのです。
ちきゅうのうえに はりめぐされた
おかねのくものすに とらえられて
ちょうちょのように そのこは もがいている
そのこのみらいのために なにができるか
だれか ぼくに おしえてほしい
日頃よく食べるチョコレートに、アフリカ・ガーナの児童労働の問題が関係しています。「そのこ」と「ぼく」の人物の日常を重ねあわせる虚構の方法を用いて、児童労働をぼくたちの身近な問題として浮き上がらせています。
また、お金の世界が「くものす」に、「そのこ」はクモの巣に捕らえられた「ちょうちょ」に喩えられています。このイメージは問題を直感的に表現しています。像的な喩えであり意味的な喩えです。「そのこ」は、自分をクモの巣に捕らえられた「ちょうちょ」に喩えはしないでしょう。そのように見ているのは語り手の「ぼく」の目と心です。そして、読者はそのような「ぼく」に共感します。
わたしは「そのこ」のために何ができるのでしょうか。「ぼく」に何を教えられのでしょうか。考えさせられます。
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※『そのこ』 谷川 俊太郎作、塚本 やすし絵、晶文社 2011年