ふるはしかずおの絵本ブログ3

『 せかいで いちばん つよい国 』- 「しあわせ」とは何かを考える寓話

興味を惹かれるタイトルです。

「しあわせとは何か」について考えます。

      ・・・

大きな国の人びとは、

自分たちの暮らしほど素敵なものはない、と信じています。

大きな国の大統領は、

いろんな国へ戦争をしにいきます。

その論理はこうです。

       

せかいじゅうの 人びとを しあわせにするためだ。われわれが せかいじゅうを せいふくすれば、みんなが われわれと おなじように くらせるのだからな

      

みんな征服され、

征服されていない国は、たったひとつになりました。

ひとつだけ残すのも、気持ちが悪い。

 

 (「戦争は 戦争の目で ものを見るのよ」アリス・ウォーカー)

  

そこで、

大統領と兵隊たちは出発します。

その国についた大統領は驚きました。

軍隊がないのです。

人びとは、彼らをお客のように歓迎するのです。

大統領と兵隊たちは、

 人びとの家に泊まり、

 人びととおしゃべりをし、

 彼らから石けりや歌をならい、

 むかしばなしを聞き、

 冗談にわらいころげます。

     ・・・

生活に溶けこむ兵隊たち。

結局、見張りの兵隊を残して、国に帰ることにしました。

見張りの兵隊たちは、

ふだん着に着がえ、

野原や畑にとびだしました。

一方、

国に帰った大統領と兵隊たちは、みんな大歓迎されます。

せかいを すくう せいぎの みかた! 大きい国は つよい国!

     ・・・

でも、

どこか変 !

小さい国の料理や石けりが流行り、

小さい国の服を着ている人がいます。

ある晩、

大統領は息子にせがまれます。

「お父さん、歌をうたって」。

彼が、息子にうたった歌は、あの小さな国の歌でした。

「しあわせ」とは何かを語った寓話です。

「せかいでいちばんつよい国」とは何かということを期待して読んだ読者は、物足りなさを感じるかもしれません。また、戦争をなくす解決策をここに見つけだすことはできないでしょう。 風刺もありますが、空想された理想 、ユートピアです。しかし、 このような世界を見たい作者の思いがあります。

      ・・・

※『せかいでいちばんつよい国』デビッド・マッキー作、なかがわちひろ訳、光村教育図書、2005年

  

【 追 記 】

文中に加えたアリス・ウォーカーの言葉は、『なぜ 戦争は よくないか』(偕成社)からとりました。彼女は「戦争はなんでもできる/どんな国の言葉も話すことができる」「子育て中の母親たちのところにも/戦争は /やってくるの」「 戦争は /たくさん経験を積んでも/すこしも賢くならない 」とも言っています。  (2021/4/17)

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