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沖縄に伝わる昔話です。
慶留間(げるま)の島に、かわいらしい女の子が生まれた。 若い夫婦は、可愛(かなー)と名づけた。「おおかた、かみさんの おめぐみにやびん」と思うて、毎朝、拝所(うがんじょ)にもうでていたそうな。ある日、「可愛は、天の神子じゃ。だいじに だいじに そだてるがよい」とお告げがあった。
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可愛は、
なんでも覚えるかしこい子だった。
可愛の七つの誕生日の朝、
「私は、天にいかねばなりませぬ」と言いのこし、
裸足のまま、慶留間のてっぺんのオタキ山に向かって走りだした。
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可愛は、
オタキ山のてっぺんで、右手をあげ、手招きをした。
すると、黄金色の竜がたかだかと舞いあがった。
可愛が、竜の背に乗ると、
竜も可愛も、ぽあっと消えてしもうた。
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何年かが過ぎた。(後半)
あるのどかな春の日、
とつぜん、大和の海賊が、阿嘉と慶留間にやってきた。
食べ物、宝物をうばい、むすめ、子どもをひっさらいはじめた。
すると、
黄金竜が、ひゅるるっと 唸りをあげ、
ごごーん ごごーん
と大きな音が、天と地をゆるがしはじめた。
・・・
海は、ざわんざぶりん ざわんざぶりんと 荒れはじめ
大粒の雨が、海賊船をたたきはじめた。
竜は、きゅるきゅるっと 海賊船を巻きあげ、
ぐるん ぐるんと 振りまわし
こっぱみじんにしてしまった。
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黄金竜が、たつまきを連れ去るとき、
島の衆は、黄金竜の背に、うつくしい天女を見たという。
「きっと 可愛だ」
「可愛が わしらを すくってくれたのじゃ」
黄金竜がつきさした青竹は、奥武島(おーじま)のおおゆり(大百合)になったそうな。そして、島の人は、このおおゆりに天女の姿を見るそうな。
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可愛がどのようにして生まれたのかは省略しましたが、可愛の父母は、身分違いで結婚を反対され、舟がたどりついた小さな島で可愛を産んだのでした。七つの誕生日に、 可愛は竜とともに消えてしまいました。天の神に召された子でした。島に苦難や危機があるとき、黄金竜に乗ったうつくしい天女、可愛がやってくると信じ、それを伝える人たちがいます。
オノマトペがいっぱいでした。
ぽあっ、ゆらり ゆらり、ぴりんぴりん、ずぐん ずぐん、ぴーん ぴーん、ぱちくり、しゃきん、すーい すーい、ぴたり、ぐるり ぐるり、ゆっくり、くっきり、ひゅるるっ、 ごごーん ごごーん、 ぐるぐる、ざわんざぶりん、ゆっさ ゆっさ、ぐいん ぐいん 、 きゅるきゅる、 ぐるん ぐるん、ぽわっ、やんわり、はっきり、ほんわり。太字のオノマトペ は、黄金竜が現れ海賊船をこっぱみじんにしてしまう場面に使われています。また、海賊は大和からやってきて略奪をすると描かれています。
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※『黄金りゅうと天女』 代田昇文、赤羽末吉絵、BL出版 2018年
【 追 記 】
代田昇文、赤羽末吉絵の作品(1974年)の復刊です。
1972年 5月15日、沖縄の施政権がアメリカから日本に返還されました。この絵本は沖縄の本土復帰を記念して出版されたのでしょうか。それは分かりませんでしたが、沖縄の文化に対する敬愛を感じます。2022年5月15日、沖縄は本土に復帰して50年を迎えます。