もともと3冊であった絵本(『目であるく』『かたちをきく』『さわってみる』)を1冊にまとめました。マーシャ・ブラウン( Marcia Brown、1918年~2015年 )の文(詩)と写真で構成された絵本です。あらすじの紹介では、この絵本の魅力を十分伝えきれません。(ごめんなさい)。翻訳は詩人の谷川俊太郎さんですが、翻訳詩集のような絵本です。
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「目であるく」は、長い詩(119行)です。
要約して紹介します。
「みること」は、世界を目であるくことだと言っています。
みることは 感じること。
逆さまになると
横むきになると
見えてくるものがある。
みることは えらぶこと。
みることで 耳を 傾ける。
みることで あなたは 知る。
みることは 問いを うみだす。
みることは あなたを 解き放つ。
すてきなものごとを 心にためこむ。
みることで
みえるものを
じぶんのものにしよう。
次は、
「かたちをきく」の詩の冒頭の一節です。
「かたちは かたりかける。/ことばよりも すばやく/かたちは おしえてくれる、/なにが おこっているか/どんな かんじか。/だれでも かたちのことばを/ならうことができる。」
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次は、
「さわってみる」の詩の冒頭です。
「ひとつの せかいに/あなたは はいってゆく。/あなたの まわりの/くうきすら なにかに さわっている。/さわれば わかる/あなたの せかいが」
そして、このように締めくくられます。
さわることは せかいを かんじること。
さわることは せかいが かんじること。
3つの詩はどれもとても長い詩で、全体を紹介できないのが残念です。
絵本を読まれることをおすすめします。
これらの詩を通して、マーシャ・ブラウンは、自然をよく見よう、自然を感じよう、わたしたちの感覚・感性を豊かにしようと言っています。自然に触れ味わうことをすすめます。言葉でわかるだけでなく「聞いて」「味わって」「触れてみる」ことでわかること、形を見ることでわかることがあります。作者・マーシャ・ブラウンの自然観、絵本をつくる姿勢、また彼女の生き方が詰まった絵本です。子ども向けとは言えないかもしれませんが、いつか出会って欲しい一冊です。
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※『目であるく、かたちをきく、さわってみる。』 マーシャ・ブラウン文・写真、谷川俊太郎訳 港の人 2011年
【 追 記 】
1.3番目の『さわってみる』からの連想です。
詩人の大岡信さん(1931~2017)に「さわる」という詩があります。その詩の中に「さわることは見ることか」「さわることは知ることか」「さわることは存在を認めることか」「さわることはさわることの確かさをたしかめることか」ということばがあります。この絵本の世界と通ずるような詩だと思いました。好きな詩のひとつです。
2.マーシャ・ブラウンのこの絵本を出した出版社(港の人)にも拍手を送りたいと思います。港の人がいなければ、出合わなかった絵本でした。 (2019/11/29)