
『くまのコールテンくん』でおなじみのドン・フリーマンの1955年の作品です。 子リスのアールの冒険物語です。
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お母さんは、
息子のアールに言いました。
「ねえ、アール。そろそろおまえも、外にでて、じぶんの手でドングリを見つけることを、おぼえるときだよ」
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アールは、
人間のともだちの、ジルを訪ねます。
ジルは、アールにドングリとクルミ割をあげます。
喜んで帰ってきたアールに
お母さんは、言います。
「リスのくせに、クルミわりきがいるなんて、きたことがある?」
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つぎに
ジルは、赤いスカーフをアールにあげました。
うれしくなって、帰ってきたアールに
お母さんは、言います。
「リスのくせに、くびをあたためるものがいるなんて、きたことがある?」

ここから、後半です。
「お話はずんずん急ぎます」
( 宮沢賢治『 虔十公園林 』 の中の語り手の言葉)
夜、
アールは、ドングリ見つけようとして、
木のうろ(空洞)をのぞくと、
大耳のミミズクがいます。
「どこにいけばドングリが見つかるか、おしえてくれませんか」
「おおきなナラの木に、わんさかあったはずだ。」
でも、赤い色見ると怒りだす、雄ウシのコンラッドに注意しなさい。
ミミズクは、アールに忠告します。
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ナラの木には、やはり、コンラッドがいました。
コンラッドは、アールの赤いスカーフを見ると、
興奮して、
大暴れ。
ナラの木に 体当たり。
すると…
その衝撃で、
ドングリが、なん百もふってきました。
赤いスカーフのおかげで、ドングリを手に入れたことをお母さんに話します。そして、アールは、ジルのところへ行き、人形に赤いスカーフをまいてあげます。「もうこれ、ぼくには、いらなくなったんだ」と言って。アールは、ジルにもドングリをひとつ置いていきました。
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アールの成長物語です。
赤いスカーフが印象的に使われていました。
ところで、アールのお母さんの言葉も印象的です。「じぶんの手でドングリを見つけることを、おぼえるときだよ」。ジルの好意をよろこんでいるアールに向かって、「リスのくせに、クルミわりきがいるなんて、きたことがある?」「せかい一だめなリスになりたいのかい、おまえは」。お母さんはアールの自立求めています。子どもたちはアールに同化して絵本を体験するでしょう。主人公はアールと言えますが、 大人の読者はお母さんの言葉も心に残るのではないかと思います 。
主人公とは誰でしょうか。
主人公を決める上で、「私にとって」という条件が大切だと思います。
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※『子リスのアール』ドン・リーマン作・絵、山下明生訳、BL出版 2006年 (2020/12/12)