ふるはしかずおの絵本ブログ3

『女王さまの影』- 影がぬすまれる怪事件

サブタイトルは「動物たちの視覚のはなし」です。

科学の絵本でもあり、おはなしの絵本でもあります。

  

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女王さまの舞踏会のさなか、

かみなりが、

ビカッ、ドッカーン!

大広間は 真っ暗闇に なりました。

明かりがつくと、

 

 キャー!

   

女王さまは、自分の影が 盗まれているのに 気がつきました。

 

 

名探偵のシャコが、ゲストの動物たちを 見わたし、いいました。

    

 「犯人は、カメレオン卿ですな!

   

 「わたしは無実です!

   

カメレオン卿は、いいました。

わたしは、両目でひとつの えものをとらえなければ、ねらいをさだめられない、

と言って 無実を主張します。

でも、サメ大佐の尾びれが テーブルの下に消えるのを見たと証言します。

     

   

サメ大佐は、マムシ嬢が  あやしいと言い

マムシ嬢は、ヤギ伯爵が  あやしいと言い

ヤギ伯爵は、トンボ夫人が あやしいと言い

トンボ夫人は、イカ大王が あやしいと言い

イカ大王は、ハト博士が  あらしいと言います。

   

  

ハト博士は、言いました。

「とげとげの こどもたち、でてきなさい」

    

ウニの子どもたちが、ごそごそ でてきます。

ウニの子どもたちは、影で かくれんぼをしていたけど、

女王様の影は 遊びに使っていないと、いいました。

   

  

 「おトイレからかえってきた 女王さまには、

  かげがなかったんだもん!

  女王は、かげをおきわすれて きたんだよ、

  おトイレに!

    

大広間のだれもが、きまりわるくなりました。

女王様は、顔が 真っ赤になりました。

「女王様の影」の事件は、無事に解決しました。

   

名探偵シャコは、言いました。

     

 「くれぐれも、そとで いいふらしたりなさらぬよう、

  おねがいいたします。女王陛下のおんために」

    

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女王様の影をさがすというストーリーのなかで、動物の視覚について学べる絵本です。ものをどのようにして感知するのか、どうぶつたちはそれぞれ独自な器官と機能を持っています。

   

光を増幅することができるサメ大佐は、濁った水の中でも、ものの形がわかる目をもっています。赤外線で物を見るマムシ嬢。すべての方向の動きを同時にとらえる複眼のトンボ夫人、サッカーボールほどの目をもつイカ大王。名探偵シャコは2つの複眼をもち、10万色を見分けることができます。ユニークな視覚器官の持ち主ばかりです。

    

絵本のなかに、登場人物の視覚に関する説明があります。また、巻末に「見る」ことにについての専門的な解説と、登場した動物たちの説明もあります。「3億年前には、カモメほどの大きさの肉食のトンボがとびまわっていた」ということも知りました。

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※『女王さまの影』 シベール・ヤング作、千葉茂樹訳、BL出版 2015年  (2024/3/28)

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