『くまのコールテンくん』の作者、ドン・フリーマン(1908 – 1978 )。彼の未完の作品を息子のロイが、完成させました。
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舞台は、ワシントン市。冬がすぐそこまできている晩秋。
リスのアールは、夏に隠しておいたドングリをさがしにいきます。
かぎまわり、
ひっかきまわし、
ほりかえし、
ドングリを見つけるアール。
ほっぺに押し込み、いっぱいにして家に帰ります。
「ありがとう、パパ」
家には、ママと3人の子どもたちが待っていました。
もういちど出かけるアール。
「このまえの夏、すっごく 大きな ドングリを うめたはずだけど。あれ、どこだっけ ? 」 それは並木道の向こう側。アールはワシントン記念塔をめざします。
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記念塔のまわりは人でいっぱいです。埋めたしるしはわかりません。臭いもしません。でも、男の子がドングリを見つけました。それがアールのトングリでした。
「もっていきなよ」と男の子。
「よかった。そうでなくちゃ」とアール。
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パレードがはじまりました。おまつりの車でぎっしりの通り。
その中をアールは家族の待つ家へかけもどります。
「ありがとう、パパ」
「ごくろうさま、あなた」
子育てに忙しいアール。それはフリーマンの姿です。家族への愛情が伝わってくるおはなしです。また、晩秋のワシントンの街の情景が美しく描かれています。背景にあるのは公民権法を求める運動です。フリーマンはワシントン市で絵を描きましたが、その目的は「クリスチャン・サイエンス・モニター新聞に大衆運動の模様を取材することでした」(あとがき)。
また、この年、ケネディ大統領が暗殺(1963年11月22日)されました。フリーマンは大きなショックを受け、この作品は未完成のままにおかれました。埋もれたままのスケッチを、50年経って息子のロイが加筆して完成させた絵本です。
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※『ドングリさがして』 ドン・フリーマン&ロイ・フリーマン作、山下明生訳 BL出版 2012年 (2018/11/6)