「ぞうのババール」シリーズのブリュノフの絵本です。
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アナトールさんは、ロバがほしくて たまりません。
やさしい ロバ、
かわいらしい ロバ、
働きものの ロバ、
友達になってくれる ロバ。
ねてもさめても ロバのことばかり かんがえています。
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ある日、
いちばへでかけた アナトールさん。
「ロバは うっていますか。」
「あいにく、ロバは ないんです。かわりに おうしはどうですか。」
「ふむふむ。それでは、おうしを いただこう」
でも、やっぱり ロバがほしい アナトールさん。
「きょうは ロバは うっていますか。」
「あいにく、ロバは ないんです。かわりに ヒツジはどうですか。」
「ふむふむ。それでは、ヒツジを いただこう」
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つぎの日は、ロバではなく ヤギ。
つぎの日は、もう 何もありません。
帰り道、カエルを見つけ、つれてかえりました。
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どうぶつたちは、アナトールさんを励まそうと、みんなでロバのまね。
「ヒーホー! ヒーホー!」
でも、アナトールさんは ためいき。
フクロウも 心配して 飛んできました。
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そこで、みんなで、ロバをさがすことに。
はじめは フクロウ
つぎは カエル
ヤギ
ヒツジ
おうしが でかけます。
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でも、だれも 帰ってきません。
アナトールさんは、ひとりぼっち。ともだちの 動物たちのことを思い、さびしくて、涙が ぽろぽろ。
アナトールさんの こころは、いまにも つぶれそうでした。
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すると、とつぜん「ヒーホー!」の声。
ロバが います。
うしろには、おうし、ヒツジ、ヤギ、カエル、フクロウが にっこり ほほえんでいます。アナトールさんは ロバをだきしめ やさしく キスをしたのでした。
( めでたし、めでたし。)
「かんじんなことは、目に見えないんだよ」。
『星の王子さま』のなかのキツネの言葉です。
おはなし(絵本)の世界には、愛、勇気、友情、悪、やさしさなど目に見えない肝心なことが見えるように書かれています。最も大切な認識である人間のこころについてやさしく教えてくれます。この絵本もそうです。どうぶつ思いのアナトールさん。やさしいどうぶつたち。アナトールさんのかなしい思いやよろこびが手に取るようにわかります。ロラン・ド・ブリュノフのこころ温まる世界、子どもたちに出合ってほしい絵本です。
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※『 アナトールさんの ロバ 』 ロラン・ド・ブリュノフ作、ふしみみさを訳、青山出版社 2006年 (2017/1/8)