目が見えないこと、
耳が聞こえないこと、
両親がいないことって、
どんな感じかなあと想像するひろくん( ぼく )。
・・・
ともだちの まりちゃんは 目がみえない。
ぼくは、考えます。
見えないって、どんな感じかなぁ。
目をつむってみました……
いろいろな音が聞こえてきます。
「みえないって すごいんだ。あんなにたくさん きこえるのだものね」。
「ひろくんって、かわってる」
・・・
ともだちの さのくんは 耳が聞こえない。
聞こえないって、どんな感じかなぁ。
耳をふさいでみると……
ぼくは、
お母さんのほくろの数をはじめて知りました。
ななつ あったんだね。
「きこえないって すごいんだね。あんなにたくさん みえるんだものね」
さのくんは、ぼくの口を見て、ぼくが言ったことがわかりました。
「ひろくんって、かんがえすぎ ー 」
ともだちの きみちゃんは、お父さんもお母さんもいない。
神戸にいたとき、大地震で死んじゃったんだって。
それって どんな感じかなぁ。
でも、ぼくには、わかりませんでした。
「さびしい?」
「そうでもないよ」
ほんとかなあ
「ほんとだよ」
・・・
つぎの日、
きみちゃんが言いました。
1日じっと 動かないでいてみたの。
どんなかんかなあ、と思って。
「うごけないって すごいんだね。」
たくさんのことを考えたよって、きみちゃんは言ってくれました。
「ひろくんは がくしゃみたいなんだね」
てれるぼく。
そうかもね。
うごけないって すごいことかもしれないね。
ひろくんは、車椅子を使っています。自分でうごくことができないのです。
目が見えないって、耳が聞こえないって、どんな感じかなぁと想像するひろくん。そのひろくんは、身体をうごかすことができません。このことが明らかになる最後が衝撃的です。身体をうごかすことができないひろくんのことを、わたしは想像していませんでした。ひろくんの中に自分を見る、また自分の中にひろくんを見るとき、ひろくんのように率直に言えるだろうかと考えます。
また、イラストレーターの和田誠さん(1936 – 2019)は、昨年亡くなられました。ユーモラスでほのぼのとした絵、力みのない和田さんの絵が好きでした。
・・・
※『 どんなかんじかなあ 』 中山千夏文、和田誠絵、自由国民社 2005年 (2020/1/11)