ふるはしかずおの絵本ブログ3

『とうきび』-戦争と平和を考える絵本

この絵本は、「日本・中国・韓国の絵本作家が手をつなぎ、子どもたちにおくる平和絵本シリーズ」の一冊です。詩はクォン・ジョンセンが小学生の時に書いた詩です。

       

      ・・・

 わらぶきの家の どべいの そばに

 ひとかぶ ふたかぶ みかぶ

 にいちゃんは あな ほって

 ぼくは とうきびのたねを

 ぽとり

 かあさんは つちを かぶせ

 すこし のびたら こやしをやって

 もっと のびたら しょんべんかけて

    

      

 もう ぼくの せたけくらい おおきくなった

 「これ、ぼくーの!」

 ゆびさき なめて

 つばつけて

 とおかと ひとばん ねむったあと

 ぼくたちは つつみをしょって

 とおく とおく にげた

 とうきびを そのままにして

 「いそげー」

  

   

 かあさんと とうさんが

 みしらぬとちで ほしぞら みあげ

 ふるさとを おもえば

 ぼくは ひとりで

 そのままにしてきた

 とうきびのことを かんがえた

    

  「いまごろ ひげが はえて とうきびが みのってるだろうになあ…」

     

ぼくにとって「戦争」は、夏のとうきび(トウモロコシ)と結びついています。戦火を逃れ「みしらぬとちで」避難生活をしているぼく。家で育てたとうきびは、ぼくの心の中にあるだけです。食糧も乏しく、空腹な毎日だったことでしょう。いつも夏に食べていたとうきび。そのとうきびが、戦争と空腹に結びついているところが、なんともかなしい。

     

 「戦争と空腹に苦しみながら死んでいった すべての子どもたちに 捧げます」

          

       ・・・

※『とうきび』 クォン・ジョンセ詩、キム・ファンヨン絵、おおたけきよみ訳 童心社 2016年

    

【追記】

クォン・ジョンセンの絵本は『こいぬのうんち』(平凡社)に続き2冊目です。

     

クォン・ジョンセンの「プロフィール」

「1937年東京生まれ。祖国の解放後、10歳で帰国。『朝鮮日報』の新春文芸賞を受賞し、作家デビュー、韓国の国民的詩人・児童文学作家となる。戦争体験や長い闘病生活を通して、子どもたちへの愛情や平和への思いを作品にあらわし続けた。2007年逝去」(HMV&BOOKS online)

 (2024/6/7)

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