ふるはしかずおの絵本ブログ3

『だむのおじさんたち』- 働く人間を描いた絵本

絵本作家、加古里子(1926年-2018年)さんの デビュー作(1959年)です。「ダム建設ではたらく人たち」がテーマです。

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山奥におじさんたちがやって来ます。

発電所をつくるための下調べに来た人たちです。

そして、調査の結果、ここにダムを作ることになりました。

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たくさんの人がやってきました。

たくさんの車もあつまりました。

とらっく

ぶるどーざー

ぱわー しょべる

こんくりーと みきさー

くれーん とらっく

とらくたー しょべるも来ました。

砂利、材木、鉄、セメントも揃いました。

いよいよ、工事のはじまりです。

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ダムのおじさんたちは、どのように描かれているのでしょうか。

日焼けした おじさん

鉢巻の おにいさん

がっしりした おじさん

せいたかのっぽの おにいさん

沢庵をかじっている おじさん

疲れて眠ている おじさん

ハーモニカをふいている おじさん

家へ手紙を書いている おにいさん。

工事は昼夜兼行です。

おじさんたちは 

ねむらない

おきています

うごいています

はたらいています

      ・・・

だだだだだ、だだただだ

がらがらがら がらがらがら

ういん ういん ういん

ぴぴいー ぴぴいー

びいっ ぴぴいー

おじさんたちは ダムをすこしずつ 築いていきます。

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工事は何年も続きます。

おじさんたちの言葉は、らんぼうで、こわいです。

でも、( 心は )やさしいです。

雪にも、風にも、吹雪にも、嵐にも、
おじさんたちは負けません。なきべそなんか かきません、

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とうとうダムができました。

ダムを築いた

おおきな手、

太い腕、

がっしりとした肩、

日焼けした顔。

おじさんは、じっとダムを見ています。笑っています。

山を測量し、ダムを設計し、何年もかけ建設し、そして完成するまでを働く人たちに焦点を当て描かれています。飯場の様子も描かれています。

「おじさんたちは ねむらない。/おきています。/うごいています。/はたらいています」と漸層法的に働くおじさんたちのイメージと意味をせり上げています。汗水垂らして働いている人たちの様子が読者にストレートに伝わります。働く人たちを温かく見つめる加古里子さんの心をいたるところに感じます。

      

リズムのある文章、脚韻、漸層法的な表現や対句的表現など、加古里子さんの文章の工夫と魅力に気がつきました。初版は1959年。当時黒部ダムが建設中でした。水力発電の時代です。

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※『だむのおじさんたち』 加古里子さく・え、復刊ドットコム 2007年

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