昔、
ポーランドの山の中に、バーテクという貧しい若者が暮らしていました。家には、一羽のあひるがいるだけでした。
・・・
ある日、
バーテクが、あひるの餌をさがしに池に出かけると、誰かに呼びとめられました。
見ると、
カエルが 野ばらに、はまりこみ 動けなくなっています。
「わしはカエルの王じゃ。助けてくれれば、たっぷりと礼はいたしますぞ」
「別にお礼なんぞはけっこうですよ」
カエルは、バーテクに魔法のメロディをさずけます。このメロディを口笛で吹きさえすれば、大風が吹き、かみなりが鳴り、稲光りが走り、どしゃぶりの雨がふると言います。
・・・
バーテクは、軍隊の行列と出あいました。
屋敷に案内せいと隊長は命じます。
そして、
あひるを夕飯にするといいだします。
バーテクは、魔法の力をおもいだし、口笛をひと吹きすると、兵士たちは木の葉のように空高くまいあがりました。
屋根の上に飛ばされた隊長は、あひるは食べないと約束します。バーテクがもう一度口笛をふくと、嵐はぴたりとおさまりました。
しかし、隊長はバーテクとの約束を破ります。
「わしの ばんめしに、あひる やけい」
バーテクは腹が立ち、もういちどあのメロディをひとふき。
空はまっくら。
大雨がふりだします。
洪水で、兵士たちは あっぷあっぷ。
威張るだけの隊長は もうごめん。
兵士たちは隊長を追放して、バーテクをあたらしい隊長にしました。
そして、
かがやかしい あしたをめざして
バーテクと あひるは、いさんで でかけていった。
昔話の骨格をもった面白いおはなしだと思います。
・・・
※『きこりと あひる』 クリスティナ・トゥルスカ作 遠藤育枝訳 佑学社 1979年
【 追記 】
「絶版のようです」と書きました。このブログを書いた当時はそうでしたが、現在『気のいいバルテクとアヒルのはなし』(クリスティーナ・トゥルスカ作・絵、おびかゆうこ訳 )というタイトルで徳間書店から復刻されています。