井戸に落ちてしまった子どものぞうさんを、動物たちが助けるはなしです。「おおきなかぶ」の話に似ています。『もりのなか』『わたしとあそんで』などの絵本を描いたエッツの絵本です。
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ぞうさんが、
遊んでいるうちに井戸に落ちてしまいました。
ぞうさんは、井戸からどうしても出られません。
そこへ うまがやって来ました。
うまは、力いっぱい つなをひっぱりました。
でも、うまだけでは ぞうさんを井戸からひっぱりだすことができません。
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そこへ うしがやって来ました。
でも、うまと うしが 力をあわせても ぞうさんをひっぱりだすことができません。
そこへ やぎがやって来ました。
うまと うしと やぎが 力をあわせても ぞうさんをひっぱりだすことが できません。
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この後は、ぶた、
ぶたの後は、こひつじ、
こひつじの後は、いぬです。
ぞうさんを みんなでひっぱりだそうとしますが、できませんでした。
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そこへ、ねずみがやって来ました。
みんなは、ちっぽけなねずみを見て大笑いしました。
ところが、
うまと うしと やぎと ぶたと こひつじと いぬと ねずみが、力をあわせてたら ぞうさんをひっぱりだすことができたのです。
それから、ぞうさんはもう決して井戸に落ちることはありませんでした。
うま、うし、やぎなどの動物たちが出てくる度に「ぞうさんを助けられるかな」とドキドキします。読者もぞうさんを引っ張っている気持ちになります。そして、うま、うし、やぎ、ぶた、こひつじ、いぬが出来なかったのに、最後にねずみが出て来てぞうさんを助けることができました。「ねずみってすごいな」と読者の子どもたちは思うことでしょう。
うま、うし、やぎから「ちっぽけなねずみ」へと登場人物がだんだん小さくなっていく「順序」が大切です。ねずみは確かにちいさな存在ですが、ねずみが加わることでぞうを助けることができました。そこに深い意味が生まれます。試みに「順序」を逆にして、ねずみから登場させて見るとねずみが最後に登場することの大切さが分かります。
「順序」という認識の方法は、絵本を分析する方法のひとつです。
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※『いどに おちた ぞうさん』マリー・ホール・エッツ作、たなべいすず訳、冨山房 2010年 (2021/11/18)