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平和と未来のためのメッセージです。
子どもの思いを通して作者の思想を語ります。
でも、ちょっと難しい?
・・・
小さな島に、子どもが、ひとりすわっています。
そして、世界をながめ、思います。
子どもの見た現実は?
子どもの思いとは、いったい何でしょうか?
子どもが見たのは ?
戦う兵士たちのすがた、
飢えに苦しむ人たち、
貧しい暮らし、
権力をカサに着る人、
広い海、
深い森、
流れる涙、
旗が立っている 月(moon)。
戦争、飢饉、貧困、環境汚染、自然、悲しみ……のある世界です。
・・・
子どもの思いとは ?
戦う兵士を見たとき、子どもは思います。
軍服を明るく塗りかえよう、
銃の先を小鳥の止まり木にしてしまおうと。
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飢えに苦しむ人を見たとき、子どもは思います。
砂漠に雨を降らせ、流れる川をひこうと。
貧しいくらしを見たとき、子どもは思います。
お金やパン、土地や空気をわけあおうと。
権力をカサに着た人を見たときは、その目をひらかせようと。
・・・
広い海や深い森を見たとき、子どもは思います。
汚れた水をきれいにしよう、
森の奥まではいり、木々の声をきこうと。
流れる涙や、月に立つ旗を見たとき、
いつか、愛していると言えるようになろう、
月に立つ旗を抜き取り、月にあやまろうと思うのです。
・・・
そして、
世界をもう一度ながめ、子どもは心を決めます。
・・・ここに、生まれてこようと。
子どもは、「いつか、きっと」この世界の矛盾や問題や罪悪を変えようと思い、この世に生まれようとします。絵本の中の「子ども」は、未来の生きる子どもです。いまの世界に、戦争、飢饉、貧困、環境汚染、人々の悲しみ……があることを伝えています。
流れる涙の場面を引用します。
流れる涙がある。
それを見て子どもは思った。
ほほよせ、抱き合うことをためらってはいけない。
いつか、愛していると言えるようになろう。
愛していると言われたことがなくても。
語り手によって語られる「子ども」の思いは、「子ども」とは思えないほど高度な内容です。語り手(作者)の観点がストレートに表現されています。読者は、「子ども」の思い、そして世界の問題に直面させられます。考えることを求められます。「想定される読者」はわたしたち大人です。大人向けの絵本です。
・・・
※『 いつか、きっと 』 ティエリ・ルナン作、オリヴェ・タレック絵、平岡 敦訳、光村教育図書 2010年 (2021/6/3)