科学の絵本です。
いっぽんの木の枝を動物たちはさまざまに使っています。
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最初は、
ただの木の枝だったのに・・・
ゾウにとって、 一本の木の枝はハエたたきになります。
ゴリラにとっては、つえ。
チンパンジーにとって、それはスプーンです。
チンパンジーは、木の枝をつかって、シロアリを食べます。
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ワニは、木の枝をおとりにつかって、鳥を捕まえます。(下の絵)
ダイサギのオスは、メスに木の枝をプレゼントします。
メスが木の枝を受け取ると巣作りがはじまります。
木の枝は、巣の材料になります。
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巣の材料となった枝が・・・
嵐で飛ばされ、
ながれ、
ながれて・・・
犬に、ひろわれた!
木の枝を投げると、犬がキャッチ。
木の枝は犬の遊び道具になりました。
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子供たちにとって、 木の枝はごっこあそびに使えます。
砂に絵を描く道具にも。
穴を掘れときにも使えます。
苗木の支えにもなる。
そして、
木の枝が支えた、その苗木は、
いつか・・・
みんなの家になる。
木の枝がいろいろな使われ方をしていました。 また、その意味もさまざまでした。ハエたたき、杖、スプーン、おとりの道具、プレゼント、巣の材料、あそび道具、穴を掘る道具、苗木の支えです。特にびっくりしたのは、ワニが木の枝をおとりにして鳥をつかまえることでした。「こんなことまで知らなかった」のです。
仏教に「一水四見」という教えがあります。
「水」は、人にとってはたいせつな飲みものですが、魚にとっては住みか、天人にとっては宝、餓鬼には飲もうとすると火に変わる苦しみの存在だというように、同じ「水」も見るものによって異なって認識されるというたとえです。『いっぽんのきのえだ』は「一水四見」のたとえ話のような絵本でした。
もちろん 、この絵本は仏教の「一水四見」のことを書いたものではありません。絵本の献辞にこうありました。「木の枝の、独創的でおもしろいつかいかたをあみだす天才たち、トリスタンとトラビスへ。そして、ふたりをそんなふうに育てたアランへ。」
常識にとらわれない、自由な発想をすすめる絵本として読みました。木の枝の働きや意味を決めるのは、 木の枝を使う主体の側にあります。
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※『いっぽんのきのえだ』コンスタンス・アンダーソン作、千葉茂樹訳、ほるぷ出版 2019年
【 追 記 】
ゴリラにとっては、木の枝が杖になるということはわかり難いことかもしれません。「コンゴの森にすむゴリラは、木の枝で沼の水のふかさをはかる。そして、木の枝をつえにして沼地をわたる」と絵本にありました。 (2021/4/28)