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嵐がきて、去るまでを描いています。
自然描写が正確で美しい絵本です。読者も男の子といっしょに「嵐の日」を体験します。
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暑い 暑い 田舎の夏の日です。
おや、
靄が うごいて
空が 灰色に 変わりはじめました。
鳥は 鳴かず、
小枝も そよがず、
風も 吹かない、
どんよりとした 大きな世界が 息をとめました。
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黒い雲があらわれ、
つぎつぎに雲が空をおおい、
あたりが夜のよう真っ暗になります。
そのときです。
星のすじのようなものが、すばやく空をはしりました。
「母さん、あれはなあに?」
「いなずまですよ」
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ドロドロドロドロ ガラガラガラガラ。
雷がどんどん近くなります。
突然、
銀色の雨の滝がななめにおちてきました。
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町でも
海辺でも
嵐が吹き暴れます。
山では雨が滝のようにながれます。
男の子の家の窓に雨が強くたたきつけます。
ばたばたぼたぼたと屋根をうち、
風は波のように木の間をよせたりかえしたりします。
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しかし、
嵐は ゆっくりと 静まっていきます。
空気は 澄み、
大地と緑のにおいが します。
バラは あまいかおり、小鳥は うたいはじめました。
光が いっぱいに ふりそそぎます。
「あ、あれはなあに」
「あれは虹ですよ、ぼうや」
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自然描写を楽しめる絵本です。
嵐がやってくる前の静けさ。
空を覆う黒い雲。
稲妻の閃光。
雷の音、滝のようにながれる雨、木々をゆする風の音が聞こえます。
嵐が去った後の澄み切った空気、大地と緑のにおいを感じます。そして、嵐が過ぎ去るまでの間の、男の子、お母さん、人々のこころを想像します。散文詩のようです。 ゾロトウのうつくしい文章です。
絵と文の構成について。
見開き2ページにわたって絵が広がり、そのページには文章はありません。つぎのページは文章のみです。絵はありません。これが繰り返されます。この構成に、絵と文章をお互いに尊重しあう作者たちの姿勢を見ました。
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※『あらしのひ』 シャーロット・ゾロトウ作 マーガレット・ブロイ・グレアム絵 まついるりこ訳 ほるぷ出版 1995年 (2022/5/15)