
語り手がおはなしに参加する! 語り手も人物のひとりです。
むかし
森の かたすみに やおやが ありました
店員は
つばめの エルヴィールと
さるの バブーンです
バブーンは
ものすごい 食いしんぼうでした
店のものを つまみ食いして
残ったのは、おばけきゅうりだけに なりました
エルヴィールが いいました
「たべものを しいれに いかなくちゃ・・・
ああ、船が あったらねぇ」
「ぼくにまかせて」
バブーンは 残った おばけきゅうりを きりぬき
船を つくりました
船は すいすい すすんでいきます
でも、
バブーンは おなかが すいてきました
船には 食べものは なにも ありません
「ん、ふね・・・
これ、きゅうりじゃないか
ちょっと たべちちゃおうかな」
バブーンは きゅうりの船を ひとかじり
ものすごく おいしいでは ありませんか
さあ もう とまりません
ガブリと ひとくち
もう すこし
あと、ちょっとだけ・・・
とうとう 船は ブクブク しずんでしまいました

バブーンは やっとのことで 岸にあがることが できましたが、
かぜを ひいてしまいました
エルヴィールは、
バブーンを やさしく 介抱してあげます
「エルヴィールは やさしいなぁ!
あんなこと にどと しないぞ」
バブーンは こころのなかで 思いました
みなさん、それからどうなったと おもいますか?
ふたりは 残ったきゅうりで また船をつくり
商売を はじめました
バブーンは
けっして つまみ食いを しませんでした
森の お店は いつも お客さんで いっぱいです
えっ、それから?
日曜日には エルヴィールと バブーンは
森のなかまたちと
船に のって ピクニックに いきました
・・・
「語り手」について。
このおはなしの語り手は、バブーンやエルヴィールのこころを代弁するだけでなく、「みなさん、それからどうなったと おもいますか?」と、おはなしに参加して、読者に語りかけています。また、「ああ、なんということでしょう」と、自分の思いを語っています。
また、聞き手が「お店が繁盛した後、どうなったの?」と聞いたからでしょうか? 語り手は「えっ、それから?」と反応して、バブーンやエルヴィールの後日談を語っています。
一般に、語り手はおはなしを語り説明するだけですが、自分の主観を語ることは稀です。しかし、この絵本のように、自分の考えをのべる語り手は、幼児の文芸ではよくみられます。語り手は、おはなしの大切な登場人物のひとりです。
・・・
※『さるとつばめのやおやさん』ジャン=ミッシェル・ギルシェ作、ゲルダ・ミューラー絵、ふしみみさを訳 パロル舎 2003年









