
山火事がきっかけで生まれた、動物たちの奇跡の時間です。
実話です。
1914年
アントニオは
カナダの 深い森に 囲まれた
小さな町 ゴーガンダに 住んでいました
湖のそばの家は、3階建の 木造のホテルでした
森では
オオカミが、シカを 追う声が 聞こえました
キツネ、クマ、ヘラジカ、イタチも いました
でも、
動物が、すがたを 見せることは ありませんでした
罠や 猟師を 避けるため
森の奥に すんでいました
5歳のときの 夏
森から 煙りが 出ていました
どんなに 怖ろしいことが おこったのか
アントニオにも わかりました。
火は、風に あおられ
怪物のように ほえたて
火花を まきちらし
あたりは ものすごい熱さに なりました
もう逃げるところは、ひとつしか ありません
湖です
ゴーガンダの すべてのひとが、湖に 入りました
腰まで、肩まで 水に ひたしながら
もえさかる森を 見ていました
すると・・・
キツネ、ウサギ、ヤマネコ、アライグマ
オオカミ
シカ
ヘラジカ
ヤマアラシ
リス
フクロネズミ
クマまで
みんな、湖に 入りました。

オオカミが シカの となりに
ウサギが キツネの そばに います
ヘラジカも、体が触れあうほど 近くに立っています
どのくらい 湖に入っていのか アントニオには わかりません
とうとう
火の怪物は しずまり、山火事は 消えました
人間も 動物も、湖を はなれました
アントニオは、このことを 生涯 忘れませんでした
あざやかにうかんでくるのは、目の前にいた 動物たち
人間と動物を へだてていたものが、あのあいだだけは
なくなっていたのです
アントニオとは、作者の祖父、アントニオ・ウィリー・ジローです。
人間と動物を隔てていたもの、動物たち同士を隔てていたもの、すなわち食べる・食べられる関係が一時的になくなった奇跡の時間です。山火事のような生存が最優先になる極限状況では、動物たちは、身を守ること(生存)を最優先して、捕食・縄張り争い・攻撃性のようなことを、一時やめることがあります。
湖に避難する人間と動物たちの迫力ある絵です。山火事、ホテルの様子などを説明・描写しています。
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※『森のおくから むかし、カナダであった ほんとうのはなし』 レベッカ・ボンド作、もりうちすみこ訳 ゴブリン書房 2017年 (2025/12/10)









